7、8年に及ぶ取材を重ねた桐野夏生さん、現場にいた女性にはたどり着けなかったというが、
「弁護士さんの紹介で、ひとりだけ周囲にいた女性に会うことができました。当時、妊娠中で、山岳ベースに来ないかと永田洋子に誘われたそうですが、行かなかった。その女性から、『永田たちには、ベースで子どもたちを育てる計画があった』と聞いて、びっくりしました。資料にも証言にも出てこない埋もれた事実でしたから」
だから山岳ベースには、身重の女性も赤ん坊も看護師や保育士といった若い女性たちもいたと知る。
「その人に最初、 “女性兵士たちについてお聞きしたい” と言ったら、 “女性兵士という言い方にはすごく違和感がある。彼女たちは、兵士というより、ただの女の子です” とおっしゃる。その反応に驚いたのですが、そんな計画もあったのですね。その証言で、プロットを大幅に軌道修正しました」