「私自身の体験が反映されているようなエピソードはありません(笑)が、会社員をしていた経験があるので、会社の部分などはリアリティを持って描けたかな」
そんな斉木さんの40歳はどんな様子だったのだろう。
「私、幼稚園の頃から本を書く仕事がしたいと思っていたんですね。大学卒業後、10年間は社会人をやってから作家になろうとしたのですが、いざ会社を辞めて書き始めたら、まあまったく書けなくて。ようやく書けてもどうしようもない内容で、私、終わったな……と思ったのが40歳のときでした」
つまり40歳は目の前真っ暗な状態だった、と。
「作家にはなれないのかもしれないと気付いて苦しかったですね」
その後ファンタジーノベルからスタートし、ミステリーなど幅広い作風で作品を生み出していくわけだが、今作のようなエンターテインメント性の強いものは初めて。