この音楽をめぐる激変を、3人の男の人生を軸に描いたノンフィクションが本書だ。この3人それぞれが個性的で魅力的。売れない作曲家からついには世界最大のレコード会社のトップに上り詰めたやり手プロデューサー。「mp3(エムピースリー)」という音声圧縮技術を開発し、デジタル時代の音楽の流通を根本から変えた鬼才エンジニア。そしてアメリカの片田舎のCDプレス工場に勤めながら、違法コピーやコンピュータの修理で小銭を稼ぐ労働者。
「生まれも立場も違う、出会うはずのない3人が、お互いに知らないところで絡みあいながらストーリーは進みます。実話とは思えないほどドラマチックで、早々に映画化が決まったのもわかります」
後半、3人の人生は明暗を分けることになるのだが……。音楽の流通形態の変化は、音楽のあり方も変えてしまった。かつてはLPの表と裏で「世界」が完成していたのに、いまは1曲ずつコマ切れにされダウンロードされる。これは音楽の死なのだろうか?