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『ウルトラマンF』小林泰三さん|本を読んで、会いたくなって。

ウルトラマンの世界を補完する小説です。

こばやし・やすみ●1962年、京都府生まれ。’95年「玩具修理者」で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞して作家デビュー。’98年「海を見る人」でSFマガジン読者賞、2012年『天国と地獄』で星雲賞、’14年『アリス殺し』で啓文堂大賞を受賞。

撮影・伊藤 信

ウルトラマンがいなくなった。それでもなお迫りくる怪獣や宇宙人に対抗する戦力を各国が開発する中で、日本の科学特捜隊はウルトラマンだったと思われる隊員、早田進の秘密を調べている。早田隊員には記憶がない……。

読みだすと、近所の子のウルトラマンごっこにつきあった思い出が蘇る。でもウルトラマン、どうしていなくなったんだっけ?

「テレビの最終回で怪獣ゼットンに負けるんです。そのときゾフィーという、他のウルトラマンがやってきて“私は命を持ってきた。これを与えるから一緒に帰ろう”と誘うんですね。ウルトラマンは“私が帰ると早田が死んでしまうから、その命を早田にやってくれ”と断る。するとゾフィーが“命は2個持っている”と言ってウルトラマンと早田に命を入れて、分離して帰っていくのが最終回の物語です」

そうだったのか! ウルトラマンシリーズ放送開始50年の今年、小林泰三さんが上梓した『ウルトラマンF』は、最終回の続きが楽しめる小説だ。早田隊員は科特隊のジェット機でパトロール中、何かに衝突してからの記憶がない。宇宙怪獣ベムラーを追って地球にきたウルトラマンと衝突して命を落とし、ウルトラマンと命を共有して多くの敵を倒してきたのだが。

「ウルトラマンさえ敵わなかった強敵ゼットンを、科特隊が新兵器でやっつけたんですね。これで大丈夫とウルトラマンも思ったことでしょう。しかし怪獣のゲノムを解析したり、宇宙人との接触で得た知識を応用することで、地球人の技術が急激に進歩した。小説では怪獣を呼び寄せたり、自分たちで怪獣を作ったりしだして、以前より危機的な状況になってしまいます」

テレビでメフィラス星人に巨大化させられたことがある科特隊の富士明子隊員は、宇宙人の技術を使って怪獣と戦う最中、光に包まれてウルトラマンFになる。見せ場であると同時に、不安定な技術に頼る危うさも感じさせる。

「早田と分離したはずのウルトラマンが、後にテレビの『帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラマンタロウ』に早田の姿で登場するんですよ。再合体したという説明がないまま出てくるので疑問でしたが、この小説で設定をつなげようと思ってウルトラマンが早田の体に戻ってくるところを描きました。記憶も戻ります。後のシリーズに時時出てくる早田の謎も自分なりに解決できました」

最終回の続きでもあり、シリーズの謎解きになっている。

「テレビを見て続きを空想する子どもの頃の遊びが生かされました」

早川書房 1,800円
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