口が悪くて暴れん坊、学校に馴染めないジニは、いわゆる問題児。けれど、危なっかしいほど純粋で生命力溢れる、とびきりパワフルな主人公だ。朝鮮学校の教室に飾られた“肖像画”に激しい違和感を抱き、ある事件に繋がっていく。
「10代の頃は私もジニみたいにやんちゃだったかも(笑)。自分がどこにも属していない感覚や漠然とした不安が常にあって、とにかく安心できる場所を欲してた」
“空が今にも落ちて来そうだ”。作中に登場する、ジニの逃げ場のない感情を象徴的に表したこの台詞は、実は崔実さんの過去の日記から引用したものだ。
「私の日記は少し変わっていて、日付や出来事ではなく、タイトルとそのときの感情が書いてあるんです。このときは、“空が落ちる。私はどこに逃げようか”って。執筆しているなかで、あのときの私の言葉はいまジニが言うべきだ、って運命のように感じました」