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『ひきこもる女性たち』池上正樹さん|本を読んで、会いたくなって。

周囲になじめない自分を許したくなる物語。

いけがみ・まさき●1962年生まれ。通信社勤務などを経て、フリーのジャーナリストに。現在ヤフー・ニュースで「僕の細道」を配信、ダイヤモンド・オンラインで「『引きこもり』するオトナたち」を連載中。著書に『下流中年』など多数。

撮影・千田彩子

 本のタイトルを見たとき、女性でひきこもっている人がそんなに多いのだろうか、という疑問が湧いた。ひきこもりという言葉からは、20〜30代の男性が、親の経済力に頼りながら、家にこもっている、というイメージが定着しているように思えたからだ。しかし、今の日本において女性のひきこもりも深刻な状況にあるということを、地道な取材によって鋭く切り込んだのが本書である。

「一億総活躍社会……などと国は掲げていますが、ひきこもる人たちについては、ずっと見て見ぬふりをしてきたのが実態です。とくに女性の場合、家事手伝い、育児、などによって家にいるのであれば、ひきこもっていると誰も思わないのが現状です」

  ここに落とし穴があると池上正樹さんは言う。家族以外と接触しない、友人がいない、相談相手がいない。何かをする気力がなく、社会に出ていくこともできない。

「この20年、ひきこもっている人やその方の家族などを取材してきましたが、やはりこの社会は男性のために作られたものなのだと実感しました。女性に対する配慮のなさや、傷つけられたことによってひきこまざるをえなくなってしまう。パワハラ、セクハラ、性犯罪、虐待、DV。原因はさまざまですが、まさに今の社会の縮図を浮き彫りにしているのがひきこもる女性たちだと思います」

 池上さんが取材してきた女性たちは、時間をかけて少しずつ聞き出していくと、カンが良く、社会の嘘を見抜く人が多いという。それゆえ、一度、社会との接点が切れてしまうと、なかなかつながることができない。

「なんとかしたい、この状況を打開したい、という思いは彼女たちにもあります。まだ少ないですが、当事者が立ち上がって、声を上げる場を作ろうとしています」

 先日行われた元当時者女性たちによる「ひきこもり女子会」は盛況だったと聞いた。誰かと話す、自分の思いを伝える、ということは何より大切なことだ。

「とくに地方は、ひきこもり状態にさせられた女性の集まる場がほとんどないですから、安心して話せる場所が全国規模でひろがっていくとよいですね」

 もしも、こういった女性たちを支援したい場合はどうすればいいのだろうか。

「カウンセリングのマニュアルどおりの押し付けでは失敗します。そっと後ろから支える、伴走者の立場がよいのではないでしょうか」

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