からだ

食べ物が飲み込みにくい? 歯科医師に聞く「唾液を増やす対策」。

最近、パンが飲み込みにくいのは年齢のせい? 唾液が出にくくなるのには、別の理由がありました。宝田歯科医院 院長の宝田恭子さんに教えてもらいます。
  • 撮影・岩本慶三 イラストレーション・川野郁代、山下カヨコ

こんな覚えはありませんか?

□食べにくいから水で流し込む
□ついつい早食いしてしまう
□背中を丸めて食べている

加齢やストレスが引き金となり、唾液の分泌が低下してきているかも……。そう感じたら、すぐに手を打つべし。その際に、まずチェックしたいのが、食事の習慣だ。たとえば、食べ物が飲み込みにくいからといって、水やお茶で流し込んだりしていないだろうか?
「本来は、噛むたびにたっぷりと唾液が出てくるのが理想。それを水分で流し込んでいると、唾液を分泌する習慣が断たれ、ますます出にくくなる。多少食べにくくても、飲み物なしで噛んでみようという習慣をつけるようにして。唾液があまり出ないうちに食べ終えてしまう早食いもよくありません」

せっかく唾液が出ても、しっかり飲み込まないと意味がない。それには食べている時の姿勢が関係してくる。
「背中を丸めて唾液を飲み込もうとしてみてください。途中でつっかえてしまうでしょう。食事の時は、まず姿勢を正すこと。骨盤を立てて、目線を3階から5階くらいの高さに向けると、唾液も食べ物もすっと入っていきます。美しい所作で食べている人は、機能を衰えさせていない。逆に、背中を丸めて食べるのは、機能低下をスピードアップさせているのと同じです」

正しい姿勢をキープする、そしゃくする回数を増やす、そんな心がけひとつでその後の生活がきっぱり変わってくるのだ。ちょっとしたことでも、毎日のことだからこそ、侮れない。

唾液腺を刺激して、きちんと出ているかをチェックすることも大切。

唾液分泌の機能が低下してきていないかを知るには、マッサージで確認できる、と宝田さん。
「常に唾液腺の開口部から、唾液がちゃんと出ているかなと積極的にチェックするようにしてください。毎日の食事が1回しかなかったりすると、唾液分泌の機能は確実に低下してしまいます。テレビを見ながらでも、唾液腺マッサージはできる。それをすることで唾液が出ているか確認できるし、日常的に出すことで機能低下も防げます」

それには、2つの方法があるという。
まずは、3大唾液腺と呼ばれる3カ所を押して刺激を与えるというやり方。
「耳の下あたりから、顎の線に沿ってなでるようにマッサージしてください。このあたりには、耳下腺、顎下腺という唾液を分泌する器官があり、顎先の内側にある舌下腺と合わせて、3大唾液腺と呼ばれています。刺激すると、じゅわーっと舌の下あたりから唾液が出てくるのを感じるはず」
この3カ所から分泌される唾液はそれぞれ異なった性質を持つ。耳下腺からはサラサラした唾液が、顎下腺と舌下腺からはサラサラとネバネバが合わさった唾液が分泌されている。

3大唾液腺を刺激する、マッサージがこちら。

1. 最初は耳の下からスタート。中指に少し力を入れて手を添え、顎に沿って何回かなでていく。リラックスして、気持ちよく行うのも大切なポイント。
2. 今度は耳の下から、顎の骨の内側の柔らかい部分(顎下腺)まで手を進めて、人差し指や中指を軽く当てて押す。顎先を上げて行うとやりやすい。
3. 最後は舌下腺へ。顎先の内側に両手の親指をそろえて当て、ゆっくりと押し上げる。のどぼとけをつぶさないよう気をつけながら、何回か繰り返す。

このほかに、口腔内には歯と歯肉を除いて粘膜のいたるところに小さな唾液腺が存在している。舌でこれらを刺激するのがもうひとつの方法だ。
「唇の裏や歯茎にある小唾液腺を、口の中から舌で刺激します。舌の先で片側の頬から顎先の内側を押しながら、反対側の頬まで一周させる。逆方向にも回し、これを3回ずつ繰り返す。舌まわしに疲れたら、3大唾液腺のマッサージを途中で入れるといいでしょう」

どちらもマッサージの後はちょっと休んで、実際に口の中に唾液が出ているかを自分で確かめてみることを忘れずに。こうして日常的に唾液腺を刺激することで、機能の低下は防げる。

小唾液腺への刺激は、舌を使って口中で行う。

1. 舌の先を使って、まずは頬の内側に触れ、押しながら回していく。頬の粘膜の内側にある、サラサラとネバネバが混じった混合腺への刺激になる。
2. 顎先の内側の歯の付け根のところは、特にしっかりと押しながら回す。舌の裏側が痛いくらいに感じるが、ちょっとだけ我慢を。
3. 反対の頬まで舌先をぐるりと1周させ、最後は上唇の内側まで回しきる。これを3回行い、同様に逆まわしして1セット。
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