【庭を楽しむ 平井かずみさん】自然のままを受け入れる、庭も花生けも同じです。【後編】
5月にはバラ、6月にはアジサイ。花と緑が調和する小さな庭が、花生けについて教えてくれること。
撮影・徳永 彩
そもそも平井さんがガーデニングを始めたのは、フラワースタイリストの仕事をするずっと前、20代半ばで結婚したばかりの頃。ベランダにプランターや鉢を置き、チューリップやスミレなどを気の向くまま育てた。そのうちにバラの魅力に目覚め、70鉢以上ものバラでベランダが埋め尽くされるまでに。30代で一軒家を建てることになった時、決まっていた設計図を引き直してもらい、ひと部屋分を削ってまで作ったのが今の庭だ。思いの詰まった庭は、18年の間に少しずつ変化してきた。
「毎年1月、今年は何を植えようかと、ノートに書き出してプランを練ります。植物を移植するなど、庭のレイアウトを見直すことも。この季節の庭も、清々しくて、気持ちがいいんですよ」
空が高く、草木はどこか凛とした様子の1月の庭。春や夏の華やかさは、静かに花を待つ冬の時間があってこそ。
「植物の成長にとっても、この時季の作業はとても大事。まず、土に腐葉土を混ぜたり堆肥を撒いたりして、土作りをします。そして、植物たちが休眠している間に、木を剪定したり枯れてしまった草花を抜いたり。風通しをよくして環境を整えておくんです」
春のカラフルな花々、夏に生い茂る緑、秋に色づく紅葉や実もの、冬の立ち枯れた木々。丁寧に土台を作ることで、小さな庭には何度も旬が訪れる。
「一つひとつの植物も同じです。うちのシンボルツリーのジューンベリーは、春一番に白い蕾をつけて、真っ白な花が咲き乱れ、その後には新緑の葉っぱ、そして赤い実。庭と接していると、切り花を買ってくるだけではわからない、一瞬一瞬の旬に出会えるんです」
冬の澄みきった空気のもと、花を待つ庭。
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