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認知症の家族をケアする側も笑顔でいるために。伝わる言葉、伝わらない言葉

認知症の家族とのコミュニケーションを育てる、気持ちに余裕の生まれる伝え方とは?

イラストレーション・あさとひわ 文・松本あかね

認知症の父との日々、我が家の場合

漫画・あさとひわさん イラストレーター。埼玉県生まれ。認知症になったお茶目な父、マイペースな母との日々を描いた8コマ漫画『ねぼけノート 認知症はじめました』(朝日新聞出版)が評判
漫画・あさとひわさん イラストレーター。埼玉県生まれ。認知症になったお茶目な父、マイペースな母との日々を描いた8コマ漫画『ねぼけノート 認知症はじめました』(朝日新聞出版)が評判

記憶があいまいになっても豊かな感情が波打っている

認知症の家族をケアする側も笑顔でいるために。伝わる言葉、伝わらない言葉

脳の負荷と感情の負担のかからない言葉がけを

認知症の人とのコミュニケーションがうまくいかないのは、認知症のせい? 答えはイエスでありノーである。介護ジャーナリストの島影真奈美さんによれば、一つは認知症による脳の変化が関わっている。

「認知症になると、情報を一度に処理することが難しくなる場合があります。そのため、複数のことを一度に言われるとわからなくなったり、知っていることもパッと出てこなかったりするのです」

もう一つは感情的な要因。認知症の相手の言動を間違っていると正そうとすれば、言われる側にとっては常に怒られ、否定されるようなもの。するとどんな言葉も受け入れられなくなるのは健常者と変わらない。

「覚えていないことがあっても、感情がなくなるわけではありません。むしろ大事なことを忘れているかもという不安、自分の状況がよくわからない不確かな日常の中で周囲の様子に敏感になりやすい。目の前の人をよく見て、話をしてもよい相手かどうかを直感的に感じ取っていると考えられます」

つまり、「わからない」だけではなく「聞きたくない」という反応が強く起きている場合もある。こうした脳への負荷や感情的な負担を減らすには「怒らない」「否定しない」「説得しない」ことがポイントだが、子ども扱いすることを決して意味しない。

幾つになっても親は親。プライドを傷つけない

「よく『介護が必要になったら、子どもだと思ったほうがいい』といわれたりもしますが、親御さんが望む関係とは限りません。むしろ敬意を示し続けるほうが、お互いが傷つかず、いい関係でいられる可能性も」

一方、親子間の難しさは「理解してほしい」という子ども側の思いも関わっている。「こんなこともわからないの」「なぜ私のつらさをわかってくれないの」。受け止めてほしいという思いが強いほど、かなわなかったときの失望や無力感も大きくなりやすい。

ケアする側に心の平安をもたらす「伝わる言葉」 「介護を経験した家族の話を聞くと、後悔や罪悪感を抱えて…

ケアする側に心の平安をもたらす「伝わる言葉」

「介護を経験した家族の話を聞くと、後悔や罪悪感を抱えている人は少なくありません。だからこそ、お互いが傷つく事態はなるべく避けたいし、家族自身が消耗しすぎない方法を探ることが大切です」

そのためには認知症観を更新する必要もあるかもしれない。アルツハイマー病による脳の変化があっても、生きる目標を持つ人では、認知機能が保たれやすい傾向が見られたという研究結果もある。

「認知症になっても、〈その人らしさ〉がすべて失われるわけではありません。『認知症だからわからない、できない』と決めつけず、本人の思いを聞いてみる。できなくなったことよりも今やりたいこと、できることに目を向け、一緒に工夫する。そんな関わり方がお互いの気持ちを少し軽くしてくれるかもしれません」

話を聞いた人

島影真奈美(しまかげ・まなみ)さん
介護ジャーナリスト。介護・医療分野の取材・執筆を行う傍ら、介護とキャリアを語り合う昼スナック「ケアスナ」主宰。著書に『健康長寿 解剖図鑑』ほか。

『クロワッサン』1174号より

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