私の日常がガラリと変わる。AIは頼りになるパートナー
撮影・西岡 潔 イラストレーション・新地健郎 文・保手濱奈美
オフィスでも
【商品サンプルのベース作りに活用して時間とコストを削減】
例えばブローチは、以前は実物サンプルを作り何度も色の調整を行っていたが、今は写真をChatGPTに添付して、理想の色になるまで指示すればOK。これでファーストサンプルを作り、2回目以降に実物を作製。
兵庫県西宮市で暮らしとオリジナルウェアの店『OURHOME』を営むEmiさん。“ちょうどいい暮らし”をテーマにモノづくりと情報発信を続け、今年で起業から14年。SNSの総フォロワー数は34万を超えるなど、Emiさんのライフスタイルも含め、多くの共感を得ている。現在、50人のスタッフとともに業務を行っているが、会社の方針としてAIを取り入れ始めたのは2024年のこと。
「その年の初めに『今年はAI元年にしよう!』という目標を掲げました。というのも、私たちの会社はおかげさまで業績が好調で年々商品の需要が高まっていましたが、定時を9時から16時30分と決めていて、残業はほぼありません。私も含めてほとんどのスタッフにお子さんがいることもあり、この勤務形態は守りたい。みんなに無理なく、お客さまにも喜んでいただくためには……。そのちょうどいいバランスを考えた結果が、AIの導入でした」
AIにできることはAIに任せ、スタッフは自分たちにしかできないことに専念する。ただ、当初は全員が賛成というわけではなかったという。
「AIに抵抗感のあるスタッフもいたので、それをどう払拭しようかと考え、愛称をつけることにしました。ChatGPTなので“チャッさん”にしたところ、『チャッさんに聞いてみますね』みたいな感じで気軽に活用してくれるように。今ではみんなの身近なアシスタントのようになっています」
【各種案内も文章で指示すれば見やすくデザインしてくれる】
顧客に向けた買い物方法の説明など、ビジュアルで見せたい案内物の作成はAIの得意分野。盛り込みたい文章を打ち込み、「図を入れて」など指示すると、デザイン込みの一枚があっという間に完成!
定時就業を維持したままこなせる仕事量が増加
活躍の場面は、商品製作から事務的なことに至るまで、さまざまある。
「例えば商品を作る時、以前は1回目のサンプルを取引会社さんに作ってもらっていましたが、それを今はチャッさんにやってもらっているんです。その分、時間とコストが削減できますし、画面上でイメージを固めたうえで実物のセカンドサンプル作りを取引会社さんに依頼できるので、仕上がりの精度もアップしました。効率がよくなり、商品の企画点数も増えたうえ、定時就業は変わらず維持できている。もちろんチャッさんのおかげだけではありませんが、貢献は大きいと思います」
自宅でも
【完成形を事前に確認したいインテリアの相談に】
新居づくりの際、候補のモノや色がその空間に合うかどうか試してみないとわからない。そんな時はAIが重宝。実際の空間を写真に撮って、AIにインテリアのはめ込みを指示。すると、イメージがクリアに。
EmiさんはAIをおもに仕事で使っているが、プライベートで大活躍する機会が到来。それは今年、長年のマンション暮らしから戸建てに引っ越しをした時のこと。画像を駆使して、家電やインテリアの選定に役立てたそう。
「リビングに造作の棚を設置しましたが、そこに入れるテレビのサイズに悩んでいて。マンションで使っていたテレビを置いたら、余白が広くなってしまったんです。その状態をスマホで撮って、チャッさんに添付。写真に写っているテレビのサイズと、それより少し大きな2種類のテレビのサイズを書き込み、それぞれを置いた場合のイメージを出力してもらいました。すると、ベストな1台が判明。ビジュアル化されるとわかりやすく、実際にそのサイズのテレビを置いてもピッタリでした」
棚の飾りも生成できるからイメージがわきやすい!
Emiさん一家は、『OURHOME』の代表取締役を務める夫・良平さんと高校生の男女の双子、猫2匹という構成。息子の部屋の棚の色を決める際にも、AIを活用した。
「工事途中のまだ箱だけのような状態の時に写真を撮って、『グレーにしてください』と色を指定。生成された画像のグレーが薄いかもと思い、『もう少し濃くして』とさらに指示。実際に使う時のイメージがわきやすいように、そこに飾る予定のサッカーのトロフィーなども入れてもらいました。それを息子に見せると大満足。できた棚に大事なアイテムを飾っています」
時には、AIを料理など家事に役立てることも。
「調理家電のノンフライヤーを買ったのですが、作りたい料理に対してベストな温度と調理時間が知りたくて。ローストビーフを作る時にチャッさんに聞いてそのとおりに設定したら、『私こんなに料理上手だったっけ?』と思うほど(笑)、完璧に仕上がりました」
【新規購入した調理家電の最善の使い方を尋ねる】
初めて使うノンフライヤー。そのポテンシャルを最大限に引き出すため、AIにおすすめの調理法を教えてもらう。そのとおりにローストビーフを作った時は、プロ級の仕上がりで、家族にも大好評。
AIに頼りすぎることなく、ちょうどいい距離感で
会社でAIを導入した影響もあり、業務の幅は広がりながらも16時30分で帰れる生活は引き続き維持。退勤後から18時の夕食作りまで余裕があるため、着付けを習ったり、整体に行ったりと自分の時間も持てているそう。
「私は暮らしと仕事のバランスこそが大切だと思っているんです。家族との時間を持ったり、ごはんをしっかり食べたりと、生活の土台になる部分が後回しになってしまうと、前向きに仕事に取り組むことはできないと思うから。スタッフにも心身ともに健やかに働いてもらえるように、今の定時退社を崩さず続けていきたいです」
とはいえ、仕事の効率だけを重視してAIを多用するということではない。
「人の温度感を大切にしたいので、AIは頼れるところだけ頼るというスタンスです。私は書籍を22冊出していますが、行間からにじむ温もりのようなものは、人間が書いた文章からしか感じられないと思います。これからもAIとは“ちょうどいい距離感”で付き合っていきたいです」
『クロワッサン』1171号より
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