〈暮らしにとけ込む、骨董と古道具。vol.2〉アフリカやアジアものの中に、シンプルでモダンなものがあることを知ってほしい
取材/撮影/文・二階堂千鶴子 撮影・柏原美也子
アフリカのマスクに衝撃を受けたのが、この道に入ったきっかけだという。
「顔に6本も角があったんですよ」
アフリカやアジアのプリミティブアートなどを扱っていた店でそのマスクと対面、こういうものを扱う店で働きたいと思ったところタイミングよく就職でき、念願の仕入れの仕事についた。
とはいっても、アフリカものやアジアものでも、いわゆるエスニックでデコラティブなものは好みではなく、シンプルでモダンなものしか選ばない。むしろ、アフリカやアジアにそういうものがあることをみんなに知ってほしいと。
「好きなものしか買いません」と柏原さんはさらりと。
買い付けに行ったヨーロッパの骨董店で、見たその一瞬、直感でこれがいい、考えたり迷ったりしないで決める。買った後でつまらないものだなあ、あっちにすれば良かったと後悔することはないのか尋ねたら、「全くない」と。買う際にそれが売れるかどうかも考えないというからすごい。
「好きだから選ぶ、そうやってきたから、長く続けられんじゃないかなあ」
これはあのお客様が好きそうだなと思っても、自分が好きでなければ買わない。そうしないと逆に売れなくて失敗しそうだという。
柏原さんの好きなもの、形はシンプルで古びていて奥行きのあるもの、使い込んでいて布ならばシミがあるくらいのもの、雑味があるもの。
可愛いという表現をよく使うという。
「でも、みんなの言う可愛いとは違いますね」
『アンタイディー』のブログの中で、麻のギンガムチェックの袋を紹介しているのだが、なんと「胸キュン」という言葉が登場。『赤毛のアン』のイメージなのかと聞いたら、全く違って、色あせるほど使い込んでボロボロなのが、「胸キュン」になってしまうほど可愛いと。なるほど。
「外国の人はアンティークをインテリアとして考えるけれど、日本人は家が狭いから飾るよりも使えるかどうかを、まず考えます。私も同じですね、とにかく使いたい」
だから、器が好き。食べものが映える器、絵皿よりも無地を選ぶそうだ。フランス、オランダ、東欧、日本、韓国などの器を扱っている。
確かに均⼀化されたインテリアや機能的なものに囲まれた暮らしの中で、長い時間を経てきたものは、⼼に響きます。骨董や古民具は使う、飾るだけでなく豊かな気分にも元気にもさせてくれる。骨董と暮らしのこんな捉え方はうれしい発見です。
仕入れ先で新しいものに出会うときがいちばん嬉しい
「長いことやっていると、買い付けに行っても同じようなものに出会うことが多いんですけれど、たまに新しいものに出会うことがあって、まだこんな見たことないものがあったのかって、そういう発見がいちばん嬉しいです」
最近、新しい発見がオランダの骨董屋であった。アフリカ、コンゴのクバ族のボンゴツルという葬儀に来た人に渡す札のような形のもの。その骨董屋はコレクターから十数枚まとめて出たものだから、バラ売りはしないと冷たい態度。全部はかなり高額、1枚だけなんとか売って欲しい、もう今後出会うことはないかもしれないと思うと、その店で粘りに粘った。頑張ったかいあってか店主が「君の熱意はなかなかいいよ、気に入った」と言いながら売ってくれたそうだ。骨董好きの気持ちが通い合ったってこと。柏原さんのその時の興奮が伝わってくる。
アフリカものはファインアートとして見てほしいと思っても、強い印象があって飾りづらいと敬遠されることが多いそうだ。
「昔は見たこともないものを好きな人が多かったですけれど、最近はどうしてもある程度ブランド化されたものにしかみんなの興味がいかなくて。余裕がないというか、時代の流れなのかもしれないですね」と柏原さんは残念そう。
骨董屋さんも好きなものに出会ってうまく買えたときのワクワク感は、私たちお客さんと同じなのだなと改めて思います。骨董が好き、古いものに惹かれる、この思いは売る側、買う側関係なく共通です。
柏原さんの直感で選ぶ、好きなものしか買わない、このブレない姿勢が類のない個性的な骨董屋さんとして30年もお客様から信頼され愛されてきた理由なのでしょう。「特に何も記念になるようなことはしません。ただ、続けていくのみです」と淡々と話す柏原さんでしたが、祝30周年おめでとうございます。
art&antiques UNTIDY(アンタイディー)
住所:〒167-0053 東京都杉並区西荻窪南2-29-17 クオン西荻1F
営業時間:12時〜18時30分
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