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〈暮らしにとけ込む、骨董と古道具。vol.2〉アフリカやアジアものの中に、シンプルでモダンなものがあることを知ってほしい

第2回は骨董屋さんをご紹介します。東京 西荻窪にある『アンタイディー』の柏原美也子さんにお話を伺いました。個性的でセンスのあるもの選びは評価が高く、今年で30周年になるそうです。西ヨーロッパ、東欧、北欧のアンティークや日本のやきものなど幅広く扱っていますが、アフリカやアジアものが印象的です。

取材/撮影/文・二階堂千鶴子 撮影・柏原美也子

柏原美也子(かしわばら・みやこ)さん art&antiques UNTIDY(アンタイディー)店主。大学卒業後、クリエイティブな仕事に憧れたが、作り出すより選ぶ方で関わりたいと「東京かんかん(アジア・アフリカのプリミティブアート、民族工芸品を扱う会社)」に入社し、仕入れを担当。1996年に独立。『アンタイディー』オープン
柏原美也子(かしわばら・みやこ)さん art&antiques UNTIDY(アンタイディー)店主。大学卒業後、クリエイティブな仕事に憧れたが、作り出すより選ぶ方で関わりたいと「東京かんかん(アジア・アフリカのプリミティブアート、民族工芸品を扱う会社)」に入社し、仕入れを担当。1996年に独立。『アンタイディー』オープン
「店名のアンタイディー(UNTIDY)は、だらしないという意味で、名前のとおり店の中はごちゃごちゃしています」と柏原さん。ジャンルは様々でひとつひとつ見ていると、宝探ししている気分になります
「店名のアンタイディー(UNTIDY)は、だらしないという意味で、名前のとおり店の中はごちゃごちゃしています」と柏原さん。ジャンルは様々でひとつひとつ見ていると、宝探ししている気分になります
ヨーロッパ、日本の唐津焼、古伊万里、李朝の器など扱っている。料理が映えるかどうかを基準にセレクト。使いやすそう
ヨーロッパ、日本の唐津焼、古伊万里、李朝の器など扱っている。料理が映えるかどうかを基準にセレクト。使いやすそう
「店名のアンタイディー(UNTIDY)は、だらしないという意味で、名前のとおり店の中はごちゃごちゃしています」と柏原さん。ジャンルは様々でひとつひとつ見ていると、宝探ししている気分になります
ヨーロッパ、日本の唐津焼、古伊万里、李朝の器など扱っている。料理が映えるかどうかを基準にセレクト。使いやすそう

アフリカのマスクに衝撃を受けたのが、この道に入ったきっかけだという。

「顔に6本も角があったんですよ」

アフリカやアジアのプリミティブアートなどを扱っていた店でそのマスクと対面、こういうものを扱う店で働きたいと思ったところタイミングよく就職でき、念願の仕入れの仕事についた。

とはいっても、アフリカものやアジアものでも、いわゆるエスニックでデコラティブなものは好みではなく、シンプルでモダンなものしか選ばない。むしろ、アフリカやアジアにそういうものがあることをみんなに知ってほしいと。

ルワンダのツチ族のマット。ラフィアを厚めに織ったもの。幾何学的な模様が魅力。 44cm×89cm 3万3000円
ルワンダのツチ族のマット。ラフィアを厚めに織ったもの。幾何学的な模様が魅力。 44cm×89cm 3万3000円
ナイジェリアのムムイエ族の貨幣。市場で何かを買う時に使うのではなく、婚礼の結納金など権威や富の象徴のようなもの。その部族特有で、まるでアートのような形が面白い。台座の幅8cm×高さ40.5 cm(台を含む)各2万5000円
ナイジェリアのムムイエ族の貨幣。市場で何かを買う時に使うのではなく、婚礼の結納金など権威や富の象徴のようなもの。その部族特有で、まるでアートのような形が面白い。台座の幅8cm×高さ40.5 cm(台を含む)各2万5000円
ルワンダのツチ族のマット。ラフィアを厚めに織ったもの。幾何学的な模様が魅力。 44cm×89cm 3万3000円
ナイジェリアのムムイエ族の貨幣。市場で何かを買う時に使うのではなく、婚礼の結納金など権威や富の象徴のようなもの。その部族特有で、まるでアートのような形が面白い。台座の幅8cm×高さ40.5 cm(台を含む)各2万5000円

「好きなものしか買いません」と柏原さんはさらりと。

買い付けに行ったヨーロッパの骨董店で、見たその一瞬、直感でこれがいい、考えたり迷ったりしないで決める。買った後でつまらないものだなあ、あっちにすれば良かったと後悔することはないのか尋ねたら、「全くない」と。買う際にそれが売れるかどうかも考えないというからすごい。

「好きだから選ぶ、そうやってきたから、長く続けられんじゃないかなあ」

これはあのお客様が好きそうだなと思っても、自分が好きでなければ買わない。そうしないと逆に売れなくて失敗しそうだという。

柏原さんの好きなもの、形はシンプルで古びていて奥行きのあるもの、使い込んでいて布ならばシミがあるくらいのもの、雑味があるもの。

可愛いという表現をよく使うという。

「でも、みんなの言う可愛いとは違いますね」

『アンタイディー』のブログの中で、麻のギンガムチェックの袋を紹介しているのだが、なんと「胸キュン」という言葉が登場。『赤毛のアン』のイメージなのかと聞いたら、全く違って、色あせるほど使い込んでボロボロなのが、「胸キュン」になってしまうほど可愛いと。なるほど。

胸キュンのギンガムチェックの袋。残念ながら、売り切れてしまいました
胸キュンのギンガムチェックの袋。残念ながら、売り切れてしまいました
曲島焼(まがのしまやき)面取り筆筒。かつて栃木県の土管などを作っていた窯。水を入れても漏れないので花入にもなる。石のような風合いがいい。高さ12cm×直径10.5cm 2万5000円
曲島焼(まがのしまやき)面取り筆筒。かつて栃木県の土管などを作っていた窯。水を入れても漏れないので花入にもなる。石のような風合いがいい。高さ12cm×直径10.5cm 2万5000円
李朝木箱。19世紀韓国の鉄製の金具を使った漆の木箱。幅42.5cm×奥行12cm×高13cm 9万円
李朝木箱。19世紀韓国の鉄製の金具を使った漆の木箱。幅42.5cm×奥行12cm×高13cm 9万円
胸キュンのギンガムチェックの袋。残念ながら、売り切れてしまいました
曲島焼(まがのしまやき)面取り筆筒。かつて栃木県の土管などを作っていた窯。水を入れても漏れないので花入にもなる。石のような風合いがいい。高さ12cm×直径10.5cm 2万5000円
李朝木箱。19世紀韓国の鉄製の金具を使った漆の木箱。幅42.5cm×奥行12cm×高13cm 9万円

「外国の人はアンティークをインテリアとして考えるけれど、日本人は家が狭いから飾るよりも使えるかどうかを、まず考えます。私も同じですね、とにかく使いたい」

だから、器が好き。食べものが映える器、絵皿よりも無地を選ぶそうだ。フランス、オランダ、東欧、日本、韓国などの器を扱っている。

(上)キュノワール皿。 裏面が黒いフランスの陶器。日本の江戸時代の石皿みたいなちょっと分厚くて使いやすそう。直径26cm×高さ3.8cm 2万8000円(左)無地唐津皿。直径12.5cm×高さ3.3cm 1万5000円(右)李朝皿。直径20cm×高さ5cm 2万8000円
(上)キュノワール皿。 裏面が黒いフランスの陶器。日本の江戸時代の石皿みたいなちょっと分厚くて使いやすそう。直径26cm×高さ3.8cm 2万8000円(左)無地唐津皿。直径12.5cm×高さ3.3cm 1万5000円(右)李朝皿。直径20cm×高さ5cm 2万8000円
(上)フランス黄釉楕円皿。浅目の楕円皿は使いやすい。38cm×23.5cm×高さ4cm 2万8000円(下)フランスのグラタン皿。29cm×19.8cm×高さ5.5cm 1万5000円
(上)フランス黄釉楕円皿。浅目の楕円皿は使いやすい。38cm×23.5cm×高さ4cm 2万8000円(下)フランスのグラタン皿。29cm×19.8cm×高さ5.5cm 1万5000円
オランダのアムステルダムの仕入れの旅で、ホテルそばのデリで買った料理をその日仕入れた皿に盛り付けて、デルフトの盃に白ワインを。買ってきたままプラスチックケースで食べるよりもずっと美味しく感じる
オランダのアムステルダムの仕入れの旅で、ホテルそばのデリで買った料理をその日仕入れた皿に盛り付けて、デルフトの盃に白ワインを。買ってきたままプラスチックケースで食べるよりもずっと美味しく感じる
(上)キュノワール皿。 裏面が黒いフランスの陶器。日本の江戸時代の石皿みたいなちょっと分厚くて使いやすそう。直径26cm×高さ3.8cm 2万8000円(左)無地唐津皿。直径12.5cm×高さ3.3cm 1万5000円(右)李朝皿。直径20cm×高さ5cm 2万8000円
(上)フランス黄釉楕円皿。浅目の楕円皿は使いやすい。38cm×23.5cm×高さ4cm 2万8000円(下)フランスのグラタン皿。29cm×19.8cm×高さ5.5cm 1万5000円
オランダのアムステルダムの仕入れの旅で、ホテルそばのデリで買った料理をその日仕入れた皿に盛り付けて、デルフトの盃に白ワインを。買ってきたままプラスチックケースで食べるよりもずっと美味しく感じる

確かに均⼀化されたインテリアや機能的なものに囲まれた暮らしの中で、長い時間を経てきたものは、⼼に響きます。骨董や古民具は使う、飾るだけでなく豊かな気分にも元気にもさせてくれる。骨董と暮らしのこんな捉え方はうれしい発見です。

お客さまから三浦半島のシラスをいただき、自宅で料理を。金継ぎした小皿は売れなかったので自分用に。シラスと大葉のパスタを盛った器は東欧のスープ皿で、普通のスープ皿より少し大きめで使いやすい。これも1枚売れ残ったので愛用
お客さまから三浦半島のシラスをいただき、自宅で料理を。金継ぎした小皿は売れなかったので自分用に。シラスと大葉のパスタを盛った器は東欧のスープ皿で、普通のスープ皿より少し大きめで使いやすい。これも1枚売れ残ったので愛用

仕入れ先で新しいものに出会うときがいちばん嬉しい

「長いことやっていると、買い付けに行っても同じようなものに出会うことが多いんですけれど、たまに新しいものに出会うことがあって、まだこんな見たことないものがあったのかって、そういう発見がいちばん嬉しいです」

最近、新しい発見がオランダの骨董屋であった。アフリカ、コンゴのクバ族のボンゴツルという葬儀に来た人に渡す札のような形のもの。その骨董屋はコレクターから十数枚まとめて出たものだから、バラ売りはしないと冷たい態度。全部はかなり高額、1枚だけなんとか売って欲しい、もう今後出会うことはないかもしれないと思うと、その店で粘りに粘った。頑張ったかいあってか店主が「君の熱意はなかなかいいよ、気に入った」と言いながら売ってくれたそうだ。骨董好きの気持ちが通い合ったってこと。柏原さんのその時の興奮が伝わってくる。

コンゴのクバ族ボンゴツル。木の粉を何かと混ぜて焼いたブロック状のもの。木よりも重くて、石より軽い。飾りやすくするために台を作った。幅9cm×高さ40cm(台を含む)15万円
コンゴのクバ族ボンゴツル。木の粉を何かと混ぜて焼いたブロック状のもの。木よりも重くて、石より軽い。飾りやすくするために台を作った。幅9cm×高さ40cm(台を含む)15万円

アフリカものはファインアートとして見てほしいと思っても、強い印象があって飾りづらいと敬遠されることが多いそうだ。

「昔は見たこともないものを好きな人が多かったですけれど、最近はどうしてもある程度ブランド化されたものにしかみんなの興味がいかなくて。余裕がないというか、時代の流れなのかもしれないですね」と柏原さんは残念そう。

アフリカのファインアートのような古いものを飾った店内。すっきりとした印象で心が落ち着く
アフリカのファインアートのような古いものを飾った店内。すっきりとした印象で心が落ち着く

骨董屋さんも好きなものに出会ってうまく買えたときのワクワク感は、私たちお客さんと同じなのだなと改めて思います。骨董が好き、古いものに惹かれる、この思いは売る側、買う側関係なく共通です。

柏原さんの直感で選ぶ、好きなものしか買わない、このブレない姿勢が類のない個性的な骨董屋さんとして30年もお客様から信頼され愛されてきた理由なのでしょう。「特に何も記念になるようなことはしません。ただ、続けていくのみです」と淡々と話す柏原さんでしたが、祝30周年おめでとうございます。

記事で紹介するアンティークは一点もので、すでに売り切れている場合があります。ご了承ください。価格は税込です
記事で紹介するアンティークは一点もので、すでに売り切れている場合があります。ご了承ください。価格は税込です

art&antiques UNTIDY(アンタイディー)

住所:〒167-0053 東京都杉並区西荻窪南2-29-17 クオン西荻1F
営業時間:12時〜18時30分
定休日:月曜日・火曜日
TEL:03-3335-9230
muntkidy.exblog.jp
Instagram:@muntkidy

  • 二階堂千鶴子 さん (にかいどう・ちづこ)

    クロワッサン編集長を2004〜2013年までつとめ、現在は骨董店『アンティークワッツ?』を営む。

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