暮らしに役立つ、知恵がある。

 

広告

暮らしにとけ込む、骨董と古道具。vol.1 人の手で作られ長く愛されてきた、アジアやアフリカの古民具に惹かれて

女性誌の編集者として長く活躍してきた二階堂千鶴子さん。定年退職後に骨董店を開くほど、古いものの魅力に心奪われてきました。骨董や古道具を身近に感じてもらうために、暮らしとの関わり方をアンティーク好きな人たちや骨董屋さんにインタビュー。第1回は岩瀬惠理さんのお話です。

取材/撮影/文・二階堂千鶴子

シンプルで人工的な室内に木材店で購入した木端、アフリカの木をくり抜いて作ったディスプレイ用の台など、さまざまな自然のものを置き、壁には中国の古い魔除けの石を飾っている
シンプルで人工的な室内に木材店で購入した木端、アフリカの木をくり抜いて作ったディスプレイ用の台など、さまざまな自然のものを置き、壁には中国の古い魔除けの石を飾っている

骨董の店を私はここ何年かやっていますが、お客様によく聞かれるのがこれは何に使えるのかという質問。たとえば古い鉄の重たい錠前や鍵なんて、なんと答えていいか困る。もう使えないし。形や古びた様子がとてもいいですよ、としか言いようがない。

「暮らしにとけ込む」という言葉をこの新連載のタイトルに使ったのは、骨董を暮らしに生かす、活用する、活躍させるのではない暮らしと骨董との関係を考えてみたかったからです。骨董は気になるけれど、知識もないから難しそうだし、価格が高いのは気になるし、どう扱っていいかわからないと思っている方に骨董を身近に感じるきっかけになればとも思います。

骨董が好きで購入している方、骨董を愛してやまない骨董屋さん、そんな人たちが集まった骨董市も取材して、暮らしと骨董との関わり方を探ります。

岩瀬惠理(いわせ・えり)さん 服飾専門学校でファッションデザインを教え、3年前に好きなことをしたいと退職。今は、生け花、絵画などさまざまなクリエーションを楽しむ生活を送っている
岩瀬惠理(いわせ・えり)さん 服飾専門学校でファッションデザインを教え、3年前に好きなことをしたいと退職。今は、生け花、絵画などさまざまなクリエーションを楽しむ生活を送っている

初回はアジアやアフリカの古民具に惹かれている岩瀬惠理さんを取材しました。岩瀬さんはファッション関係の仕事をいくつか経た後、服飾専門学校で長くデザインを教えていましたが、定年ということではなく、そろそろ自分の好きなことを始めたいと辞められたそうです。センスのいい、おしゃれな装いが素敵な女性です。

インドの青い空と緑を背景に宙に浮かせるように吊った、細い竹の輪を組み合わせた生け花
インドの青い空と緑を背景に宙に浮かせるように吊った、細い竹の輪を組み合わせた生け花

取材の依頼をLINEしたら、今、インドのヒマラヤのふもとにいますと岩瀬惠理さんから返事がすぐきた。今はアーティストとなった、かつてデザインを教えていた学生の縁で、インドのアーティストレジデンスで生け花を教えたことがあり、今回は同じ場所で自分の作品を制作中だという。送られてきた画像は青い空と緑を背景に宙に浮かせるように吊った、細い竹のオブジェのような生け花。

インドのアーティストレジデンスで完成した生け花と、岩瀬さん
インドのアーティストレジデンスで完成した生け花と、岩瀬さん
4日間かけて松の枝を削った
4日間かけて松の枝を削った
インドのヒマラヤのふもとの町に滞在して生け花を制作。大胆な花と木の枝の組み合わせ
インドのヒマラヤのふもとの町に滞在して生け花を制作。大胆な花と木の枝の組み合わせ
インドのアーティストレジデンスで完成した生け花と、岩瀬さん
4日間かけて松の枝を削った
インドのヒマラヤのふもとの町に滞在して生け花を制作。大胆な花と木の枝の組み合わせ

岩瀬さんは若い頃から生け花を習い、型にとらわれず素材を見るのが基本と教えられた。最近はますますその傾向が強くなり、花や木の枝から「こっちのほうが気持ちいい」という声が聞こえて、その声のままに長い時間をかけて生けるという。

シンプルな部屋に気の流れを作りたい

インドの⼤⾃然と違って、意外にもコンクリートのモダンなご⾃宅を訪ねた。

岩瀬さんは関⻄に⽣まれ奈良、京都などの古くからある⽂化に囲まれて育ち、古いものはいいものと、すんなり⾝についたと話す。また、若い頃パリに留学し、結婚してからもしばらく暮らしたこともあって、クリニャンクールなどの蚤の市通いは⽇常で、アンティークは⾝近な存在だった。

タイのスンコロク母子像。13〜16世紀、寺院などに妊娠、安産、子供の病気回復を祈願して捧げられた供物。幅6×高さ13cm
タイのスンコロク母子像。13〜16世紀、寺院などに妊娠、安産、子供の病気回復を祈願して捧げられた供物。幅6×高さ13cm
10代の頃、大阪の国立民族学博物館を知って、アジアやアフリカのものに魅せたれた。旅先で骨董屋を覗くことが多く、これはモロッコのマラケシュで買った骨象嵌の真鍮トレイ。ラクダの骨を使用。鮮やかな色と、手づくりの匂いが気に入ったという。径34cm
10代の頃、大阪の国立民族学博物館を知って、アジアやアフリカのものに魅せたれた。旅先で骨董屋を覗くことが多く、これはモロッコのマラケシュで買った骨象嵌の真鍮トレイ。ラクダの骨を使用。鮮やかな色と、手づくりの匂いが気に入ったという。径34cm
中国では古代から魔除けとされた玉(ぎょく)。漆喰の白に映える。幅8×10cm
中国では古代から魔除けとされた玉(ぎょく)。漆喰の白に映える。幅8×10cm
トルコの旅先で赤の色合いが一目で気に入り価格にこだわらず、即購入したアンティークの手織り絨毯。220×136cm
トルコの旅先で赤の色合いが一目で気に入り価格にこだわらず、即購入したアンティークの手織り絨毯。220×136cm
タイのスンコロク母子像。13〜16世紀、寺院などに妊娠、安産、子供の病気回復を祈願して捧げられた供物。幅6×高さ13cm
10代の頃、大阪の国立民族学博物館を知って、アジアやアフリカのものに魅せたれた。旅先で骨董屋を覗くことが多く、これはモロッコのマラケシュで買った骨象嵌の真鍮トレイ。ラクダの骨を使用。鮮やかな色と、手づくりの匂いが気に入ったという。径34cm
中国では古代から魔除けとされた玉(ぎょく)。漆喰の白に映える。幅8×10cm
トルコの旅先で赤の色合いが一目で気に入り価格にこだわらず、即購入したアンティークの手織り絨毯。220×136cm

「今の暮らしは⼯場⽣産のプロダクトに囲まれていますよね。そいうものには何か重さがない、響きがないって思うんです」

⼈の⼿で作られ使われてきたもの、⼈に長く愛されてきたものに惹かれる。そういうエネルギーのあるものを均⼀化されたものの中に置くと、気が流れるような変化を感じるという。それはまさに花瓶の中にザーッと⽔を注ぎこんだようなイメージだと。

建築家 長村英紀さんに依頼して建てた、コンクリートのモダンな家。土地が角地だったので防犯のためと、埃っぽくなるカーテンが嫌で窓を作らなかった。白い壁は漆喰、照明の光がきれいに反射するのと衛生的なところが気に入っている
建築家 長村英紀さんに依頼して建てた、コンクリートのモダンな家。土地が角地だったので防犯のためと、埃っぽくなるカーテンが嫌で窓を作らなかった。白い壁は漆喰、照明の光がきれいに反射するのと衛生的なところが気に入っている
シンプルなインテリアに植物など自然を感じさせるものを飾ってバランスをとっている
シンプルなインテリアに植物など自然を感じさせるものを飾ってバランスをとっている
インドネシアの馬槽(馬の飼料を入れる桶)を利用した飾り棚に骨董や自然 のものを置く
インドネシアの馬槽(馬の飼料を入れる桶)を利用した飾り棚に骨董や自然 のものを置く
建築家 長村英紀さんに依頼して建てた、コンクリートのモダンな家。土地が角地だったので防犯のためと、埃っぽくなるカーテンが嫌で窓を作らなかった。白い壁は漆喰、照明の光がきれいに反射するのと衛生的なところが気に入っている
シンプルなインテリアに植物など自然を感じさせるものを飾ってバランスをとっている
インドネシアの馬槽(馬の飼料を入れる桶)を利用した飾り棚に骨董や自然 のものを置く

岩瀬さんの家には、アンティークだけではなく⽊や⽯、⾙殻などいたるところに⾃然のものが飾られている。真っ⽩な漆喰の壁とシンプルな家具の作る直線に⾃然のものが持つ曲線が調和するのだという。

「こういった木の切れ端や石も、工場生産のもので溢れる部屋の気の流れをよくしてくれると思いますね」

部屋のあちらこちらに石が飾られている。シルクロードの遺跡巡りのツアーで訪れたタジキスタンで手に入れた石。独特な縞柄が気に入っている
部屋のあちらこちらに石が飾られている。シルクロードの遺跡巡りのツアーで訪れたタジキスタンで手に入れた石。独特な縞柄が気に入っている
石の魅力は手のひらに入る可愛らしさという。地域によって違うところが面白く旅行先で入手することが多い。なかには自分で金箔を貼った石も
石の魅力は手のひらに入る可愛らしさという。地域によって違うところが面白く旅行先で入手することが多い。なかには自分で金箔を貼った石も
部屋のあちらこちらに石が飾られている。シルクロードの遺跡巡りのツアーで訪れたタジキスタンで手に入れた石。独特な縞柄が気に入っている
石の魅力は手のひらに入る可愛らしさという。地域によって違うところが面白く旅行先で入手することが多い。なかには自分で金箔を貼った石も

確かに均⼀化されたインテリアや機能的なものに囲まれた暮らしの中で、長い時間を経てきたものは、⼼に響きます。骨董や古民具は使う、飾るだけでなく豊かな気分にも元気にもさせてくれる。骨董と暮らしのこんな捉え方はうれしい発見です。

  • 二階堂千鶴子 さん (にかいどう・ちづこ)

    『アンティークワッツ?』店主。

    クロワッサン編集長を2004〜2013年までつとめ、現在は骨董店『アンティークワッツ?』を営む。

広告

  1. HOME
  2. くらし
  3. 暮らしにとけ込む、骨董と古道具。vol.1 人の手で作られ長く愛されてきた、アジアやアフリカの古民具に惹かれて

人気ランキング

  • 最 新
  • 週 間
  • 月 間

注目の記事

編集部のイチオシ!

オススメの連載