暮らしにとけ込む、骨董と古道具。vol.1 人の手で作られ長く愛されてきた、アジアやアフリカの古民具に惹かれて
取材/撮影/文・二階堂千鶴子
日除けや冷え対策にも便利なシアーカーディガン
コットン100%で軽くて涼しい素材ながら、日差しや冷房の冷えからもしっかり守ってくれるカーディガン。これから暑くなる季節に持っておきたい、心強い1枚です。
骨董の店を私はここ何年かやっていますが、お客様によく聞かれるのがこれは何に使えるのかという質問。たとえば古い鉄の重たい錠前や鍵なんて、なんと答えていいか困る。もう使えないし。形や古びた様子がとてもいいですよ、としか言いようがない。
「暮らしにとけ込む」という言葉をこの新連載のタイトルに使ったのは、骨董を暮らしに生かす、活用する、活躍させるのではない暮らしと骨董との関係を考えてみたかったからです。骨董は気になるけれど、知識もないから難しそうだし、価格が高いのは気になるし、どう扱っていいかわからないと思っている方に骨董を身近に感じるきっかけになればとも思います。
骨董が好きで購入している方、骨董を愛してやまない骨董屋さん、そんな人たちが集まった骨董市も取材して、暮らしと骨董との関わり方を探ります。
初回はアジアやアフリカの古民具に惹かれている岩瀬惠理さんを取材しました。岩瀬さんはファッション関係の仕事をいくつか経た後、服飾専門学校で長くデザインを教えていましたが、定年ということではなく、そろそろ自分の好きなことを始めたいと辞められたそうです。センスのいい、おしゃれな装いが素敵な女性です。
取材の依頼をLINEしたら、今、インドのヒマラヤのふもとにいますと岩瀬惠理さんから返事がすぐきた。今はアーティストとなった、かつてデザインを教えていた学生の縁で、インドのアーティストレジデンスで生け花を教えたことがあり、今回は同じ場所で自分の作品を制作中だという。送られてきた画像は青い空と緑を背景に宙に浮かせるように吊った、細い竹のオブジェのような生け花。
岩瀬さんは若い頃から生け花を習い、型にとらわれず素材を見るのが基本と教えられた。最近はますますその傾向が強くなり、花や木の枝から「こっちのほうが気持ちいい」という声が聞こえて、その声のままに長い時間をかけて生けるという。
シンプルな部屋に気の流れを作りたい
インドの⼤⾃然と違って、意外にもコンクリートのモダンなご⾃宅を訪ねた。
岩瀬さんは関⻄に⽣まれ奈良、京都などの古くからある⽂化に囲まれて育ち、古いものはいいものと、すんなり⾝についたと話す。また、若い頃パリに留学し、結婚してからもしばらく暮らしたこともあって、クリニャンクールなどの蚤の市通いは⽇常で、アンティークは⾝近な存在だった。
「今の暮らしは⼯場⽣産のプロダクトに囲まれていますよね。そいうものには何か重さがない、響きがないって思うんです」
⼈の⼿で作られ使われてきたもの、⼈に長く愛されてきたものに惹かれる。そういうエネルギーのあるものを均⼀化されたものの中に置くと、気が流れるような変化を感じるという。それはまさに花瓶の中にザーッと⽔を注ぎこんだようなイメージだと。
岩瀬さんの家には、アンティークだけではなく⽊や⽯、⾙殻などいたるところに⾃然のものが飾られている。真っ⽩な漆喰の壁とシンプルな家具の作る直線に⾃然のものが持つ曲線が調和するのだという。
「こういった木の切れ端や石も、工場生産のもので溢れる部屋の気の流れをよくしてくれると思いますね」
確かに均⼀化されたインテリアや機能的なものに囲まれた暮らしの中で、長い時間を経てきたものは、⼼に響きます。骨董や古民具は使う、飾るだけでなく豊かな気分にも元気にもさせてくれる。骨董と暮らしのこんな捉え方はうれしい発見です。
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