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西武鉄道とシンガポール政府観光局がコラボ。創作シンガポール料理を楽しむ、52席のみのレストラントレイン運行

西武鉄道が2016年に始めた「西武 旅するレストラン 52席の至福」は、52席限定のレストラン仕様に改装された特別列車に乗り、窓の外を流れる景色を楽しみながら美食を堪能できるレストラントレイン企画です。2025年1月から3月の間はシンガポール政府観光局とコラボして、ここでしか食べられない創作シンガポール料理を提供。その様子を一足早くご紹介いたします。

写真・文 斎藤理子

料理を手がけるのは、ミシュラン一つ星の日本橋『nôl』のディレクター野田達也シェフ。彼が実際に旅して体験した今のシンガポールの多様な食文化が、シェフのフィルターを通してクリエイティブなシンガポール料理となり提供されるとあれば、これは見逃すことはできません。
料理を手がけるのは、ミシュラン一つ星の日本橋『nôl』のディレクター野田達也シェフ。彼が実際に旅して体験した今のシンガポールの多様な食文化が、シェフのフィルターを通してクリエイティブなシンガポール料理となり提供されるとあれば、これは見逃すことはできません。

素敵に洗練されたシンガポール料理を、緑あふれる車窓と共に楽しむ贅沢

「52席の至福」にはブランチコース(1万5000円)とディナーコース(1万8000円)がありますが、車窓からの景色を堪能したいならブランチコースがおすすめ。西武新宿駅を10時40分もしくは、池袋駅を11時02分に発車し、約2時間30分〜3時間ほどかけて西武秩父駅に到着します。ビルに埋まった都会から徐々に緑濃い森林景色へ変化していく車窓に旅行気分もどんどん盛り上がっていきます。

ブランチのメイン。チキンライスルーロー。シンガポールチキンライスをロール状にしてチキンときゅうりを巻いた、野田流チキンライス。
ブランチのメイン。チキンライスルーロー。シンガポールチキンライスをロール状にしてチキンときゅうりを巻いた、野田流チキンライス。
ブランチの前菜。左から、ラクサのクリームコロッケ、ドリアンのフロマージュブランタルト 埼玉県産生ハム添え、鹿肉のサテのパイ包み焼き。ドリアンにはパイナップルやマンゴー、パッションフルーツなど南国フルーツの香りをまとわせて、独特の臭みをマスキング。
ブランチの前菜。左から、ラクサのクリームコロッケ、ドリアンのフロマージュブランタルト 埼玉県産生ハム添え、鹿肉のサテのパイ包み焼き。ドリアンにはパイナップルやマンゴー、パッションフルーツなど南国フルーツの香りをまとわせて、独特の臭みをマスキング。
ブランチとディナーの温前菜、チリクラブのフラン(画像はディナー用)。チリクラブをフラン仕立てにし、蟹肉をのせて。添えられているのは甲殻類でとった出汁のチュイール(チップ)。
ブランチとディナーの温前菜、チリクラブのフラン(画像はディナー用)。チリクラブをフラン仕立てにし、蟹肉をのせて。添えられているのは甲殻類でとった出汁のチュイール(チップ)。
ブランチのデザート、ボボチャチャ。パンダンリーフとココナッツミルクのアイスクリーム、さつまいものクーリ。
ブランチのデザート、ボボチャチャ。パンダンリーフとココナッツミルクのアイスクリーム、さつまいものクーリ。
ブランチのメイン。チキンライスルーロー。シンガポールチキンライスをロール状にしてチキンときゅうりを巻いた、野田流チキンライス。
ブランチの前菜。左から、ラクサのクリームコロッケ、ドリアンのフロマージュブランタルト 埼玉県産生ハム添え、鹿肉のサテのパイ包み焼き。ドリアンにはパイナップルやマンゴー、パッションフルーツなど南国フルーツの香りをまとわせて、独特の臭みをマスキング。
ブランチとディナーの温前菜、チリクラブのフラン(画像はディナー用)。チリクラブをフラン仕立てにし、蟹肉をのせて。添えられているのは甲殻類でとった出汁のチュイール(チップ)。
ブランチのデザート、ボボチャチャ。パンダンリーフとココナッツミルクのアイスクリーム、さつまいものクーリ。

味覚も心も満たされる、旅するレストラン

メニューを考えるにあたりシンガポールを旅して、星付きレストランから庶民の屋台までのシンガポール料理を体験したという野田達也シェフ。「多種多様な人種と文化が混ざり合ったシンガポールはとてもエネルギッシュ。発見がいっぱいあり、常に新しいものを生み出す力があると感じました。料理の世界でも、いろいろなチャレンジを恐れずシンガポールにしかない新しい味を創り出す勢いがあり、とても刺激を受けました」。

その刺激とインスピレーションをもとに野田シェフが創り出すのは、フレンチや日本料理の技をベースに、シンガポール料理を再構築し昇華させた「52席の至福」でしか食べられない逸品の数々。ラクサをクリームコロッケに仕立てたり、チリクラブをフランにしたりと自由で大胆な発想が素晴らしく、それでいて味わえばしっかりシンガポール料理に着地する技量が見事です。

「秩父の食材を使ったり、食べられるのに捨てられてしまう食材を取り入れたりすることで、地域性やサステナビリティも意識しています。ここで食べる食事が何か良い循環につながればいいなと思いながら料理を作っています。食べて美味しいのはもちろん、心も満たすような料理が提供できれば嬉しいです」と野田シェフは語ります。

ディナーのメイン、バクテー・オ・ブッフ。赤ワインでマリネした武州牛を煮込み、スライスしてビーフライスの上に。ガーニッシュはマッシュルーム、玉ねぎ、白髪ネギとパクチー。煮込んだときにできるコンソメに秩父蒸留所のイチローズモルトで香りづけしたスープを添えて。シンガポール庶民の味バクテーがレストランクオリティに。
ディナーのメイン、バクテー・オ・ブッフ。赤ワインでマリネした武州牛を煮込み、スライスしてビーフライスの上に。ガーニッシュはマッシュルーム、玉ねぎ、白髪ネギとパクチー。煮込んだときにできるコンソメに秩父蒸留所のイチローズモルトで香りづけしたスープを添えて。シンガポール庶民の味バクテーがレストランクオリティに。
ディナーの前菜。ブランチの前菜に、魚のすり身にスパイスを加えてバナナの葉に包み蒸したもの(右端)が加わる。
ディナーの前菜。ブランチの前菜に、魚のすり身にスパイスを加えてバナナの葉に包み蒸したもの(右端)が加わる。
ディナーのデザート、ボボチャチャ。ココナッツミルクとパンダンリーフのアイスクリームのまわりには、さつまいも、かぼちゃ、いちご、タピオカ、小豆。麹ミルクにレモングラスの香りをつけたソースで。
ディナーのデザート、ボボチャチャ。ココナッツミルクとパンダンリーフのアイスクリームのまわりには、さつまいも、かぼちゃ、いちご、タピオカ、小豆。麹ミルクにレモングラスの香りをつけたソースで。
野田達也シェフ。
野田達也シェフ。
ディナーのメイン、バクテー・オ・ブッフ。赤ワインでマリネした武州牛を煮込み、スライスしてビーフライスの上に。ガーニッシュはマッシュルーム、玉ねぎ、白髪ネギとパクチー。煮込んだときにできるコンソメに秩父蒸留所のイチローズモルトで香りづけしたスープを添えて。シンガポール庶民の味バクテーがレストランクオリティに。
ディナーの前菜。ブランチの前菜に、魚のすり身にスパイスを加えてバナナの葉に包み蒸したもの(右端)が加わる。
ディナーのデザート、ボボチャチャ。ココナッツミルクとパンダンリーフのアイスクリームのまわりには、さつまいも、かぼちゃ、いちご、タピオカ、小豆。麹ミルクにレモングラスの香りをつけたソースで。
野田達也シェフ。

秩父の四季を表現した特別列車は4両編成、内装にも注目

「52席の至福」という企画は、西武鉄道とシンガポール政府観光局の、それぞれの思いが通じ合って生まれました。

それというのも、シンガポールの人々にとって、日本は最も人気のある海外渡航先のひとつ。しかし、西武鉄道は東京だけでなく沿線の代表的な観光地である秩父にも足を運んでもらいたいという願いをもっていました。そしてシンガポール政府観光局は、「52席の至福」で楽しむシンガポール料理をきっかけに、日本の人々にもシンガポールを訪れてほしいと考えました。

こうして、西武鉄道とシンガポール政府観光局は相互の観光誘致を目的に「52席の至福×シンガポール政府観光局」を実現させたのです。

シンガポール政府観光局北アジア局長セリーン・タンさん(右)、野田達也シェフ(中)、西武鉄道 堤広利さん(左)
シンガポール政府観光局北アジア局長セリーン・タンさん(右)、野田達也シェフ(中)、西武鉄道 堤広利さん(左)

電車の外装と内装デザインは、建築家の隈研吾氏によるもの。外装には、自然豊かな秩父の四季が描かれています。1号車は多目的スペース、3号車はライブキッチンで、レストランは2号車と4号車。2号車の天井には柿渋和紙、4号車の天井には西川材が使われるなど、沿線の民芸品や地産木材が取り入れられています。全体的に落ち着いた雰囲気の中でゆっくりと美味を楽しみながら、特別な時間を過ごせます。

秩父の春・夏・秋・冬をモチーフにした車両。ベースの水色は、武蔵野を流れる荒川の豊かな水を表現。
秩父の春・夏・秋・冬をモチーフにした車両。ベースの水色は、武蔵野を流れる荒川の豊かな水を表現。
天井に柿渋和紙を使用した2号車(西武鉄道提供)。
天井に柿渋和紙を使用した2号車(西武鉄道提供)。
荒川支流の入間川、高麗川、越辺川流域は江戸時代から良質な杉や檜の生産が盛んな地で「西川林業地」と呼ばれています。そこで産する木材を「西川材」といい、それを格子天井としたのが4号車。
荒川支流の入間川、高麗川、越辺川流域は江戸時代から良質な杉や檜の生産が盛んな地で「西川林業地」と呼ばれています。そこで産する木材を「西川材」といい、それを格子天井としたのが4号車。
刻々と変わりゆく景色もまたご馳走。
刻々と変わりゆく景色もまたご馳走。
秩父の春・夏・秋・冬をモチーフにした車両。ベースの水色は、武蔵野を流れる荒川の豊かな水を表現。
天井に柿渋和紙を使用した2号車(西武鉄道提供)。
荒川支流の入間川、高麗川、越辺川流域は江戸時代から良質な杉や檜の生産が盛んな地で「西川林業地」と呼ばれています。そこで産する木材を「西川材」といい、それを格子天井としたのが4号車。
刻々と変わりゆく景色もまたご馳走。

運行スケジュールや予約は西武鉄道のウェブサイトで。旅行代金には、乗車チケット、西武線1日フリーきっぷ、コース料理代金、お土産、諸税が含まれています。2025年1〜3月期のディナーコースに乗車するとシンガポールのホテル宿泊券やスクート往復ペア航空券が当たる抽選会も。ディナーコースは夕方西武秩父駅発で、発車時刻は季節により変わります。

  • 斎藤理子

    斎藤理子 さん (さいとう・りこ)

    フードジャーナリスト

    雑誌編集者を経てロンドンなど海外に長年住み、その間世界各国を食べ歩く。現在は国内外の生産者から三つ星シェフ、立ち飲みまで広く取材し執筆。著書に「イギリスを食べつくす」(主婦の友社)、「隣人たちのブリティッシュスタイル」(NHK出版)など。編著に『アル・ケッチァーノ』奥田政行シェフの連載をまとめた「田舎のリストランテ頑張る」(マガジンハウス)。2011年英国政府観光庁メディアアワード受賞。やまがた特命観光・つや姫大使。

《協力》

※料理名・料理内容・盛り付け方法は変更になる場合があります。

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