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心身の不調を招く血流の滞り、実は見直すべきは胃腸の働きでした。

血流が滞ることで生じる様々な不調。たっぷりの血流を得るために始めるべき、胃腸のコンディションアップ術とは。

イラストレーション・小泉理恵 文・板倉みきこ

"血"が不足し、 流れが滞ることが 心身の不調を招く。

婦人科が専門の漢方薬剤師として活躍してきた堀江昭佳さんがたどり着いた答えは、病名のつかない不定愁訴や婦人科系の不調の原因のほとんどは血流にある、ということ。

「漢方で捉える〝血〟とは、生命を支えるすべての土台。体内の水分を保持し、酸素や栄養を全身に届け、二酸化炭素や老廃物を回収する。体の温かさを保ち、免疫力によって体を守っています。血液は全身を流れる血流となって、この働きを担っているのです」

不調のある女性に共通するのが、血が足りない〝血虚(けっきょ)〟、血を流すエネルギー不足の〝気虚(ききょ)〟、気と血の巡りが停滞する〝気滞・瘀血(きたい・おけつ)〟という、3つの体質。これらはすべて血流不全に関わる。

「体を構成する気(エネルギー)、血、水(血液以外の体液)がバランスよく、滞りなく流れているのが健康な状態と捉えますが(下図)、血の量そのものが不足し、流れが滞ってしまっているのが、女性の心身の健康の根本的問題であることをまずは知ってください」

体を構成する、大切な3つの要素。

心身の不調を招く血流の滞り、実は見直すべきは胃腸の働きでした。

●血(けつ)

いわゆる血液のことで、全身の各器官に栄養を与え、滋養させる働きがある。〝血〟の生成と作用には〝気〟の働きが必要だが、〝血〟にも〝気〟に栄養を与え、〝気〟の働きを持続させる働きがある。

●気(き)

生命活動を維持する源で、臓器、体の表面、血脈内などに幅広く分布。目に見えないエネルギー、生命力、臓器の機能など幅広く捉える。〝気〟は〝血〟と合わさることで血流となると考える。

●水(すい)

別名・津液(しんえき)。〝血〟以外のすべての体液を指し、全身を隅々まで潤す物質と捉える。〝水〟が体内を巡るためには〝気〟の力が必要。〝水〟は〝血〟の原材料とされ、〝血〟同様に胃腸で作られている。

血流を悪くさせる3つの体質

●血虚(けっきょ)

血が足りない状態。胃腸の機能低下、栄養不足が原因の可能性大。月経不順、冷え症、動悸、かすみ目、疲れ目、貧血などの症状が。

●気虚(ききょ)

気の量が不足し、機能低下が生じている状態。新陳代謝が悪くなり、疲れやすい、冷え症、胃もたれしやすいなどの症状が出る。

●気滞·瘀血(きたい・おけつ)

気と血の巡りが悪く、老廃物が溜まった状態。ひどい生理痛や血の塊が出たり、下痢と便秘を繰り返す場合も。イライラしやすくなる。

更年期世代の心身を襲う、数多のストレスが血流を停滞。

心身の不調を招く血流の滞り、実は見直すべきは胃腸の働きでした。

さらに〝血〟の流れを悪くさせるのがストレスだ。西洋医学でいう、自律神経の乱れと同じような考え方が、漢方にもある。
「ストレスは〝気〟の流れを支配している機能を衰えさせます。もともと〝血〟を作る力が足りず流れが悪いところに拍車がかかり、悪循環に陥るのです」

ストレスとは、肉体や精神的な疲労だけでなく、暮らしや季節の変化、気候など様々なものを含む。ここに更年期が重なると、心身への負荷は増加、血流がさらに停滞して不調を招くのは想像に難くない。

「血流を改善させるには、〝血〟をたっぷり作れるよう、〝血〟を作る大本の胃腸に働きかけるのが一番です。漢方では、胃腸を〝気血生化の源〟と呼びますが、体を動かすエネルギーである〝気〟も〝血〟も、胃腸で作られるということです。その胃腸を元気にしないことには、血流は生み出されないのです」

婦人科系のトラブルで相談に来た人にも、まずは胃腸の働きを改善することから始めるそう。次から、数多くの相談者の症状を改善させた、胃腸を元気にする方法を伝授してもらう。

ストレスに 押し潰される〜
ストレスに 押し潰される〜

胃腸を元気にしたいなら、まずは休ませる。

胃が丈夫で健啖家だという人も、実は胃腸が弱っていることがある。

「食べ過ぎていれば消化しきれない食べ物が残っていたり、胃腸に過剰な負担をかけています。胃腸に休む時間を与える暇なく間食をするのも問題。まず排泄をしっかり促し、巡る体を取り戻すことが健康につながるのです」

胃腸を休ませるには空腹時間が必要。

「空腹時間に胃腸は休息と掃除をし、本来の機能を取り戻します。そこでおすすめしたいのが16時間の空腹時間を作れる〝夕食断食〟です」

ただ食べ過ぎな人ほど一気に断食はつらい。そこで〝血〟を増やす鶏肉を使ったスープを夕食にすることから提案。

「まず夕食の置き換えで体の変化を感じてみる。次に食欲がない日やだるいときに夕食を抜いてみる。それを徐々に習慣化していくと血液を作る胃腸の機能が戻り、体質も変わるでしょう」

下記の胃腸を休ませるアイデアも取り入れて、体質改善に近づこう。

空腹になる時間を作る。

心身の不調を招く血流の滞り、実は見直すべきは胃腸の働きでした。

食べ終わって90分後に胃は掃除を始めるので、食べない時間を作ること。また、夕食を控えめにすると朝おなかが空き、全身を稼働させるスイッチの朝食がしっかり食べられる。

心身のリズムに合わせる。

心身の不調を招く血流の滞り、実は見直すべきは胃腸の働きでした。

夕食断食をするなら、心身のストレスが少ない休みの日がおすすめ。また精神的にも乱れやすい生理前、生理中は避けたほうが無難。断食が自分のバイオリズムを知るきっかけにも。

血流&気持ちが整う深呼吸。

心身の不調を招く血流の滞り、実は見直すべきは胃腸の働きでした。

深い呼吸を意識すると腹部や横隔膜を膨らませたり凹ませたりでき、血流が改善する。また、深呼吸をすると自律神経が整うので、イライラからくる過食予防にも役立つ。

胃腸が喜ぶ食材を選ぶ。

心身の不調を招く血流の滞り、実は見直すべきは胃腸の働きでした。

腸内の善玉菌が喜ぶ水溶性、不溶性の食物繊維豊富な食材。海藻やきのこ、野菜、消化のよいリゾットにした玄米など、レシピで取り入れてみよう。

  • 堀江昭佳

    堀江昭佳 さん (ほりえ・あきよし)

    漢方薬剤師

    一般社団法人日本漢方薬膳協会代表理事。出雲大社参道にある漢方薬局の4代目。著書『血流がすべて解決する』が反響を呼び、漢方医学にとどまらず西洋医学や心理学的な視点からも統合的なカウンセリングを行う。婦人科系の悩みに精通。

『クロワッサン』1059号より

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