「家族あるいは家という単位について考えることが多かったです。友だちと家族の境界線や、これまでの社会のあり方などに思いを巡らせました」
今回3月末から6月初旬にかけて作った短歌12首を紹介してくれた歌人の東直子さんはこの間の日常を振り返る。
「去年も今年も同じ時季に花は咲くけれど、今年は社会が立ち止まるなかで、特別な時間になったと意識しました。家時間はいま思えばあっという間でしたが、長引く先の見えない日々の生活にはフックがなくなっていた気がします。入浴剤のことやレモンについて詠んだものは自粛のなかで歌を通して記憶に刻む行為だったのかもしれません」
東さんの短歌には日付と自作に寄せる思いも併記した。
「私の意図と違ったことを感じても、作者からすると面白いので、自由に楽しんでもらえればうれしいです」
まず短歌を読んで、情景などを浮かべた後に、東さんのコメントで当時の状況をふまえつつ味わってほしい。