おいしいごはんが、生まれる理由。
ロシャン・シルバさんの食の空間。
美しくて古いものに囲まれ、目にもおいしい食の空間。決して広くない一般的な間取りのキッチンはどこも絵になる美しさにあふれています。厳選されたアンティークを使いこなして暮らす、ロシャン・シルバさんのご自宅を訪ねました。
そう言って、完成した料理をキッチンの隣にある部屋へ運ぶ。ラグの上に日本の水屋箪笥やイタリアの古いワイン瓶が置かれた居間は、実は和室だ。テーブルにしたのは、普段は椅子代わりにも使っている、スリランカの古い簡易ベッド。さまざまな国籍や時代のものを、自在にミックスして使いこなすシルバさんの感性は、インテリアにも料理にも反映され、他のどこにもない「シルバ流」の世界を作っていた。
アンティークのテーブルが、調理台として大活躍。
「入居の際に、何カ所かリフォームしましたが、キッチンは、梁を出して天井を高くしただけです」
作り付けの調理台や流し台、棚などは、そのまま使っている。
8畳ほどの、ごく普通の日本の台所。それを美しくしているのは、窓辺のグリーンや、テーブルに飾られた花、そしてシルバさんの審美眼で選んだ家具や器の数々だ。日本の水屋箪笥、フランスの古い棚や椅子、北欧のワゴン、シルバさんの母親の故郷であるスリランカの椅子など。ここでも、さまざまな国のものが、ひとつの世界にまとまっている。
中央にあるダイニングテーブルは、ベルギーのアンティーク。毎日使うカトラリーやカフェオレボウルが常に置いてあり、それがインテリアとしても絵になっている。実はこのテーブル、料理の際には作業台として大活躍。作り付けの調理台の狭さを補ってくれるのだ。
コンロの脇にあるワゴンには、スパイスや乾物類がずらり。すべてガラス瓶に詰め替えているのは、見た目の美しさだけでなく、すぐに中身が分かる利便性も考えてのこと。色や柄がうるさいもの、美しくないものは、棚の中にしまい込んでいるため、空間全体がすっきりした印象だ。
さて、この日作ってもらったのは、野菜たっぷりのメニュー。料理はほとんど独学だというが、天性のセンスで生み出すメニューは、経営するカフェでも人気を呼んでいる。
「野菜や、ベランダで育てているハーブは、普段からよく使いますね」
そして、食材のどんな部分も、あますところなく使うのがシルバ流。ナスの果肉をくりぬいて使った後は皮もソテーし、「鱈とポテトのグラタン」の鱈も、オーブンに入れる前に、スープの出汁を取っていた。
完成した料理は、アンティークの器に盛りつけられ、食卓へ。
「味はいかがですか? おいしい?」
と、気づかうシルバさん。はい、もちろん! 素材の組み合わせ方、奥行きのある味わい。独創的な料理は、まるでシルバさんそのものだ。
◎ロシャン・シルバさんは、イタリア出身。中目黒、鎌倉、自由が丘にあるカフェを経営。独特のセンスが人気を呼び、服のデザイン、店舗設計、ウェディングの演出など、活躍は多岐に。著書に『ラヴィアラカンパーニュ ロシャン・シルバの静かな生活』(1月と7月)。妻の裕子さんはニットデザイナー。
『クロワッサン』915号(2015年12月25日号)より
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