リフォーム適齢期の50〜60代にとってまず切実なのは、老親や将来の自分自身の問題になる高齢化対策だ。山見さんは言う。
「70代を越えてのリフォームは介護のための改修で緊急性が高いものです。そういう意味では肉体的にも経済的にもまだ余裕のある50代に、先を見越してリフォームするのはいいことだと思います」
だからといって、いきなり車イス対応にするということではなく、そうなったときのために準備しておくことがポイントだという。
「老後のことを考えて床の段差をなくしたりドアを引き戸にするのは正解だと思いますが、手すりについては疑問です。体が不自由になったら必要になるんじゃないかと廊下などに手すりをつけがちですが、中途半端な知識で設置してしまうので、かえって邪魔になってしまうケースが多いんです」
大切なのはいまこの時を快適に暮らすこと。不確定な将来にばかり目を向けていたらかえって本末転倒というもの。
「おすすめしたいのはリフォームの際、必要になったらいつでも手すりが取り付けられるように廊下や階段、トイレの壁に合板の下地を入れておくこと。下地さえ入れておけば手すりはあとから簡単に取り付けられます。手すりがどこに必要なのかはその時になってからでないとわからないし、それに実際に手すりが必要になったときに設置すれば、介護保険が適用されるので経済的にも有利です」
あれもこれもと欲張らず、リフォームは一番の目的をはっきりと認識して準備すること。
「高齢になると動線がシンプルなほうが暮らしやすくなります。また、将来的に階段の上り下りがきつくなったとき、1階のリビングの横に寝室があると理想的です。リフォーム時にそういう部屋を想定しておいて、ふだんは客間として使うという手もあります」
50代以降のリフォームで導入してよかったと満足度が高いのが床暖房だそう。
「温水タイプは輻射熱で空間も温かくなって快適なのでおすすめです。リフォームで床の張り替えと一緒にやるのが賢明だと思います。広さにもよりますが、30万〜40万円ぐらいで入れられます」
家庭内事故で最も多いのが風呂場。それを防ぐための対策も講じておくことが必要だ。
「マンションには設置されていることが多いですが、戸建てにも浴室暖房換気乾燥機はおすすめです。ヒートショックを防げます」