パン屋さんの「まかない」/ベッカライ徳多朗 YOTSUBAKO | ニュース | クロワッサン オンライン
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パン屋さんの「まかない」/ベッカライ徳多朗 YOTSUBAKO

パンを知り尽くしたベーカリーの人たちに、「いつもの」おいしい食べ方を聞きました。3軒の名店がパンと相性抜群のスープを紹介。今回は、横浜のベッカライ徳多朗 YOTSUBAKOへ。
  • 撮影・岩本慶三 文・後藤真子

バックヤードのパン窯や大鍋を使って作る豪快なスープをパンに絡めて。

『もっとパンを楽しむ生活』(主婦と生活社)などの著書があり、パンの作り方をはじめ、合う料理や食べ方を多数発表しているベッカライ徳多朗 YOTSUBAKO店の徳永久美子さん。

近年夢中になっているのが、「スープに合わせて食べると、とてもおいしいんです」と話すパン・ド・ロデヴだ。フランスのロデヴ地方にあるパン・パイヤスをヒントにした素朴な食事パンで、同店では月曜限定で販売している。

店のバックヤードで、大鍋で作った料理をしばしばスタッフにふるまうという徳永さんが、この日はロデヴに合うスープを2種、用意してくれた。自宅でもよく作っているもので、牛スネ肉を煮ただし汁を使う、オニオンスープとボルシチである。

右奥から時計回りに、オニオンスープ、ボルシチ、豚白モツのカラヴリア風煮込み

牛スネ肉のだし汁は、大きめに切った牛スネ肉と水を圧力鍋に入れ、一度沸騰させて灰汁をとってから、粗塩を加えて圧をかけ20分煮て冷ましたもの。肉はサラダやボルシチの具に使い、煮汁は冷凍しておくと便利という。

オニオンスープの作り方は、玉ねぎをバターできつね色に炒め、粉を少し振り入れて炒めてから赤ワインを少量加えて飛ばし、牛スネのだし汁とタイムを加えて30分ほどコトコト煮たあと、塩で味を調えるというもの。

徳永さんが自宅で子どものおかわりに対応しやすいようオニオングラタンスープの簡易版として考案した食べ方。ロデヴにチーズをのせて焼き、上からオニオンスープをかける。オニオンスープの味付けは、チーズの塩分を考慮して塩を控えめにするのがポイント。

「ビーツが好き」という徳永さんが究めたボルシチは、ビーツとセロリ、人参、玉ねぎなどの野菜をバターで炒め、トマト缶、牛スネのだし汁とちぎった肉も加え20分ほどコトコト煮て作る。どちらもロデヴにチーズをプラスし、スープを絡めていただくのが、徳永さんおすすめの食べ方。スープを吸ったロデヴは格別で、どこか懐かしく、心と体の温まる味だった。

バゲットに横から切れ目を入れ、 カイエンペッパーの辛味がきいた豚白モツの煮込みをたっぷりと挟み、オリーブ油をかけて食べる。「オリーブ油は遠慮しないで、いっぱいかけてくださいね」。この際、手や口の周りが汚れるのは気にせず、豪快に味わいたい。

スタッフたちもこの日の3種のスープとロデヴやバゲットを食べて、「おいしい」と大歓声。満面の笑みでおなかにおさめ、溌溂と仕事に戻っていった。

YOTSUBAKO店には35席のカフェスペースが設けられ、日替わりのスープやドリンクメニューが揃っている。毎週月曜はロデヴの試食が配られることもあり、徳永さんを筆頭にパンを愛するスタッフたちの熱意が伝わってくる気持ちのいい空間だ。

店のバックヤードでは驚くほど多くのスタッフが忙しく立ち働いている。みな「徳多朗のパン」が大好きで集まった人ばかり。徳永さんの手料理を味わう休憩タイムも和気あいあい。
ボルシチはクリームチーズを塗ったパン・ド・ロデヴとともに。チーズ の酸味とボルシチのビーツの風味が口の中で一体に。「ディルを散らしてもおいしいです」と徳永さん。

パン・ド・ロデヴは、「粉に対し90%も水分を加えたトロトロの生地を、成形しないで焼き上げるパンです。最初は高温の窯でふくらませ、温度を下げて水分を飛ばしていく焼き方で、皮はカリッと、中はしっとりもちもちに仕上がります」。中身にぼこぼこと大きな気泡ができるのが特徴で、「日本でも、ふだんからロデヴをもっと食べるようになってほしいです」と徳永さん。

もう一品、日本でも親しまれているバゲットによく合うのが、豚白モツのカラヴリア風煮込み。オーブンで使用可能な鍋に、材料(豚白モツ、にんにく、玉ねぎ、鷹の爪、塩、カイエンペッパー、トマト缶、赤ワイン、フェンネルシード)をすべて入れ、蓋をしてパン窯で1時間熱すれば出来上がり。まさにパン屋さんならではの料理だ。それをバゲットにたっぷり挟んでかぶりつくと、こんな野趣ある味わい方があったのかと楽しくなってくる。

ベッカライ徳多朗 YOTSUBAKO

神奈川県横浜市都筑区中川中央1・1・5 YOTSUBAKO1F

☎︎045・913・3200 9時~19時(土日祝7時~) 水曜休

『クロワッサン』943号より

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