セールスポイントは三択式で、選択を間違えると大変なことになる。本の使い方が「載せる」になったり、浄水器が「投げる」に、味噌汁が「聴く」になったりする。するとナカタ君は「この本を頭に載せて歩くとスタイルが良くなってモデル並に……」と、奇想天外なセールストークを披露してくれる。
続けているうちに、商品を売るゲームをやっているのか、田舎の漫才の演出をしているのか分らなくなってくるから不思議だ。ナカタ君がお爺ちゃんお婆ちゃんと交す間抜けでゆるい会話は、以前紹介した「Family Guy」のアホなアメリカンジョークに一脈通じて、郷愁を感じさせてくれた。
郷愁に浸っていたら、三十数年前にやったオフィスコーヒーのセールスのバイトを思い出した。
飛び込みで営業に行ったビルが、ちょっと変だなと思ったらなんと暴力団の事務所で、緊張のあまり生きた心地がしなかったが、組長さんは親切にも「せっかく来てくれたんだから」と一ヶ月契約してくれた。
あの時の組長さん、ありがとう。