高温多湿の夏に備えて、賢く食べ物を保存する方法。
文・一澤ひらり イラストレーション・山口正児
近年、気温35度を超える猛暑が続く日本。食中毒を引き起こす細菌の多くは20度ぐらいで増殖が活発になり、35~40度で増殖のスピードが最も速くなるといわれる。しかも細菌の多くは湿気を好むため、梅雨時から細菌による食中毒の危険性は急激に高くなるのだ。そこで気になるのが食品の保存方法。きちんと取り扱い、安全に保存するにはどうするか? 食と健康アドバイザーの南恵子さんに聞いた。
「食中毒予防の3原則は菌を『1.付けない、2.増やさない、3.殺す』です。まず食中毒の原因菌を食べ物に付けないこと。次に食べ物に細菌が付着したとしても増やさないこと。そして食べ物や手、調理器具等に付着した細菌を殺すことが肝要です。その際に必要な衛生管理のポイントを考えていきましょう」
事前に防ぐためには、食品の購入時、保存時、調理時などシチュエーションごとに対策を講じることが大切だ。状況別に健康を守るための注意点を教えてもらった。
【 購入時 】新鮮さを損なわぬよう敏速に買い物、クールに持ち帰る。
最大のポイントは新鮮で安全な食材を買い、時間をかけずに持ち帰ること。前提として、商品の回転が速くて衛生管理の行き届いた店を利用し、必ず商品の消費期限を確認することが大切だ。
「買い物の動線を考えることも重要です。生鮮食品、とくに肉や魚など傷みやすいものは最後に買って、カゴに入れたらすぐレジへ。保冷バッグを持参する、スーパーにある保冷剤を入れるなど、クールに保つ工夫をして、帰宅したら素早く冷蔵庫に入れましょう」
車での買い物も夏は駐車中に車内が高温になるので要注意。
「買い物袋の一番下に肉や魚のトレーを入れがちですが、熱くなったシートに直接載せるのは品質劣化の原因になり危険です。シートの上に厚めのタオルを敷くなど、熱が伝わらない対策が必要です」
万全を期すなら、アウトドアで使うクーラーボックスやバッグなどを車に常備して、そこに収納して持ち帰るのも方法だ。
【 保存時 】冷凍庫は満杯でOK。冷蔵庫の詰め過ぎは禁物。
買い物から帰宅したら真っ先に、生鮮食材は冷蔵庫へ直行。
「ひと息つきたいところですが、生ものは鮮度がどんどん落ちていきます。何をおいてもすぐ冷蔵庫に入れるのが鉄則です。ただし、冷凍庫はパンパンに詰めたほうが保冷効率がいいですが、冷蔵庫の詰め過ぎは冷気がスムーズに回りません。7割程度を目安にして、冷蔵効果を保持するように。庫内がスッキリすると必要なものがすぐ取り出せるので、冷蔵庫の開放時間を短くするメリットもあります。毎月一度、庫内の整理を習慣づけるとよいでしょう」
扉の開放時間が長いと冷蔵庫内の温度が上がり、細菌が増殖する原因に。夏はとくに気をつけたい。
「生ものはまず冷蔵庫に入れてから、必要なものを1パックずつ取り出して保存処理をするように。特に肉は買ってきた際に入っていたトレーから出して、キッチンペーパーで水気を拭き取り、使いやすい量に小分けしてからラップをかけ、チルド室に入れるといいでしょう」
【 調理前(下準備) 】手、調理器具、食材はよく洗い、アルコール除菌スプレーも。
手に付着した細菌やウイルスは水で洗うだけでは除去できない。
「調理の前に石鹼で丁寧に手を洗います。指の間、爪、手首まできちんと洗うことが大切です。私は洗ってタオルで拭いたらキッチン用のアルコールスプレーをして消毒しています」
食品に使えるアルコールスプレーは必需品、と南さんは強調する。
「私は木のまな板を使っていますが、使う時は一度水でサッと洗って拭いて、乾いてからアルコールスプレーをかけます。使い終わったらよく洗って乾かし、またアルコールスプレーをかけます。食品に使うことができるタイプなら安全で安心です。まだ使っていない方にはぜひおすすめしたいですね」
まな板も包丁も、肉・魚用と野菜用を分けて使い、使ったらその都度こまめに洗う。
「私は肉や魚を切るときはシリコン製の薄い下敷きみたいなまな板シートを、ふだん使っているまな板の上に敷いて使っています」
野菜は流水でよく洗い、土などをしっかり洗い落としたい。