からだ

その疲れは「心の悪いクセ」から? 今こそ、脱がんばりやさん宣言。

7万人以上を治療してきた鍼灸師のやまざきあつこさんが、がんばりすぎるあなたに贈る、心が軽くなる言葉。
  • 撮影・黒川ひろみ イラストレーション・服部あさ美 文・黒澤 彩

「日本では女性が頼られすぎですよね。男性に比べ体力がなく、ただでさえ温度差や気候の影響も受けやすいこの時季に、家事や介護などやることがたくさんある。不調を訴える人が多いのも当然です」とは、7万人以上を治療してきた鍼灸師のやまざきあつこさん。

40〜50代女性は、更年期を迎えながら重荷を背負ってがんばりすぎ、心身のバランスを崩しがちだという。

「ホルモン減少が要因で、できないことが増えるのは仕方のないこと。自分を責めず、体の声にも耳を傾けて」

ここでは夏疲れを増長しかねない思考の「悪いクセ」をチェック。心が軽くなれば、そのぶん体もラクになるはず。

(悪いクセ)怒れない平和主義者。自分の感情を抑えて、人の気持ちが重荷に。

人との関係やその場の雰囲気を悪くしたくないからと、怒りたい場面でも怒れない。そんな平和を尊ぶ姿勢が不調につながることもある。

「こういう優しい人は、よく倦怠感を訴えます。自分さえがまんすればいいんだと思っていると、人の感情がどんどん入ってきてしまって体がだるくなりやすい。エネルギーが巡らずに滞っている状態です」。

繊細で優しいのは美点でもあるけれど、他人の感情を背負ってばかりでは自分の心は重くなる一方。ときには勢いよくキレてみる、言いたいことを言ってみてもいいのでは?

(悪いクセ)心配性で思い込みが強く、妄想しがち。

「経験上、鬱(うつ)に近い症状がもっとも出やすいのがこのタイプです」とやまざきさん。

メンタルからくる不調のなかでもとくにつらいのは鬱っぽくなり、やる気が出ず、食欲も落ちてしまうこと。心配性の人ほどその傾向にあり、自分のなかにつらさを溜め込んでしまい、相談ができないのだという。

コロナ禍など社会不安の影響も受けやすく、不安が不安を呼んで悪い妄想が膨らむ負のループに。思い込みの強さが拍車をかけるので、まずは人の言葉に耳を傾けることが大切。深刻な場合はためらわずカウンセリングを受けよう。

(悪いクセ)自分の思いどおりにならない人や事にいつもイライラ。

何でも自分の理想に当てはめようとして、うまくいかないとイライラしてしまう。物事や他人が思いどおりにならないのは当たり前なのだが、そこに執着してしまうのが悪いクセ。

「『絶対にこうあるべき』『○○するのは許せない』といった正義感の強さが裏目に出てしまうのもこのタイプ。許容範囲が狭すぎるのかもしれませんね。手の痺れなどが症状として現れることもあります。自律神経を安定させるためには他人の言動に一喜一憂しないことも必要。人への期待値を上げすぎると、逆に人のアラしか見えなくなります」

(悪いクセ)ささいなことに緊張しやすい、生真面目な優等生。

人生の一大イベントを控えているわけでもないのに、常日頃から緊張していて自分を追い込んでしまう。「ちゃんとしなくては」との思いが強い、生真面目な女性に多いタイプ。

「症状としては、過呼吸になったり、喉が詰まったように感じたり、胸がざわつくという人も多いです。ひどくなるとパニック障害を起こすなど生活に支障が出るほどに。ささいなことも考えすぎてしまうんですね。失敗してもいいし、もっとゆったりしていいんですよ、とアドバイスしています。心が落ち着く手のひらの真ん中のツボを押すのもおすすめ」

(悪いクセ)仕事もプライベートも、 人と比べて妬んだり落ち込んだりする。

妬みっぽい人には、眠れない症状が多いという。くよくよ考えすぎる人だけが不眠になりやすいわけではなく、ヒステリックに興奮しやすい人も寝つけない傾向が。

「妬み、ひがみの感情が強い人は、承認欲求が強い人。いつも“自分”が中心なので、多少落ち込んだとしてもへこたれません。他人と比べたり、羨む気持ちは誰にでもあります。でも、どちらが上か下かにこだわるのは不毛です。親の価値観が影響していることもあるので、自覚して悩んでいたら、やはりカウンセラーに個別に相談したほうがいいでしょう」

(悪いクセ)何事にも限界までがんばりすぎる。手を抜けない。

「あまり多数ではないですが、たまにいるんです。どんなこともMAXまでやらないと気がすまないっていう人」。

たいていは、ある日、突然ガクッときて動けなくなってしまう。人のエネルギーは無限にあるわけではないので、キャパシティを超えたら体を壊すのは自然の理。そこまでがんばってしまうのは、自分を大切にすることが上手にできていない証拠だ。

「『私は健康だから大丈夫』『仕事が趣味みたいなもの』といった過信は危険です。休まずに元気でがんばり続けられる人なんて一人もいないと肝に銘じましょう」

(悪いクセ)「だって」「でも」「どうせ」 が口癖のネガティブ思考。

自信のなさからくるネガティブワードのように思えるが、実はこれらは欲求が強く、かたくなな性格の人ほど使いがちな言葉。

「思い込みの強さを併せ持っているパターンが多いですね。クセになっているということに気づかないまま、自分で自分を追い詰めてしまうことになり、息苦しさなどの体の症状にもつながります。
まずは自覚することから。『だって』『でも』『どうせ』の3Dワードが減ってくると、話している相手の反応が変わり、やがてネガティブ思考に陥りがちな心のかたくなさも緩んでくるはずです」

やまざきあつこ

やまざきあつこ さん

鍼灸師

神奈川県藤沢市辻堂の鍼灸院「鍼灸師 やまざきあつこ」院長。著書『女はいつも、どっかが痛い』(小学館)には自律神経を整える生き方のヒントが満載。

『クロワッサン』1073号より

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