くらし

蕎麦をすするしぐさのコツをお教えします。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

落語は“聞く”ものなのは大前提なのですが、案外“見る”要素も大きなウェイトが置かれているものです。お客さまがよりたくさんの想像を広げて楽しんでくださるために、落語家の“しぐさ”も大事です。

落語のしぐさで代表的なものといえば「蕎麦をすする」というもの。扇子を箸に見立て、“ズズズー”と何もないのに音をさせて食べた“ふり”をするとあら不思議、お客さまの目に見えるはずのない蕎麦が見えてしまったりするんです。丼を持つ手に重みが感じられるようにとか、箸に見立てた扇子の動きと目の動きがリンクするようにといった、いくつかのコツがある中で、肝心なのはすするときの音でしょう。

ときどき学校の芸術鑑賞の公演(落語が芸術かはさておき)などで、生徒さんや先生がたにも一緒に蕎麦を食べるしぐさを演じてもらいますが、この“音”がまず出ません。“スー”っとストローで空気を吸うような音、“ピチャピチャ”と猫が水を飲むような音、コーンポタージュを“ズズ”と飲むような音がすればマシなほうでしょう。

じゃあ、われわれ本職にはどんなコツがあるのかというと……実は人それぞれに方法が違うんです。

口の形や舌の長さが影響するのか、仲間うちで聞いてみてもわりとまちまち。それでも共通点は開けた口を舌でふさぎ、せまいすき間から息を吸うーーもう文章にすると、何言ってるんだか分かりませんよね。実際に寄席においでになり「落語日和」を楽しむついでに、噺家の蕎麦をすするコツも探してみたらいかがでしょう。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』996号より

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