くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】学校を休みがちだった娘に「時間をドブに捨てた」と言っていいでしょうか。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は不登校気味だった娘にかける言葉についての相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>
中3の娘に対しての言葉の選び方についてご相談します。
中学の3年間、起立性調節障害で朝起きられず、プラス、今まで控えめだった子などが、娘の言葉を借りるとマウント(?嫌味)を言ってくることもあり、あまり登校出来ないまま、卒業を迎えることになりました。
進路は塾のおかげで、比較的難易度の高い高校に合格はしています。
吹奏楽部の倍率が高い楽器担当に選ばれた、と誇らし気な顔を見た中1の5月で中学生が終わっていた気分です。本当に様々な思いをしました。他の人が経験出来ない時間を過ごしたのは無駄では無かったと思おうと思いましたが、ルイさんの以前の相談の回答にあった言葉が響いて、ふと、娘に時間をドブに捨てたなあ、と言ってみたくなりました。
実はこの言葉は娘には地雷なのでしょうか? (てぃんく/ 女性/40代主婦です。 小1の女の子、中1の男の子、中3の女の子がいます。)

山田ルイ53世さんの回答

筆者は中2の夏から不登校となり、そのまま数年間引きこもりました。
てぃんくさんの仰る通り、あの期間は無駄だった、学校に行って勉強や部活に精を出し、友達と遊んだりした方が良かったなと後悔している。

しかし、"完全に無駄だった"と本人が断じていても、
「……でも、それがあったからこそ、今の山田さんがあるんですよね?」
何とか美談風に着地させようとする、とにかく意味を与えないと気が済まない、そんな方々も結構いらっしゃって、戸惑います。
「意味がないと意味がない」、おかしな物言いですが、そういう風潮がしんどい人間もいるだろう……本連載を含め、事あるごとにそんなことを書いています。

とは言え、あくまで"自分に限っては"という話。
「今振り返ると、引きこもっていたのも、無駄じゃなかった!」
「あのとき出会った○○が、役に立っています!」
というケースも実際沢山あるでしょう。

"時間をドブに捨てた"かどうか、それを決めるのは、娘さんご自身で相談者ではない。
問題は、無駄か有意義かではなく、本人以外が総括し、意味付けようとすることではないでしょうか。
「吹奏楽部の倍率が高い楽器担当に選ばれた」、「比較的難易度の高い高校に合格はしています」……文面の端々から、相談者が娘さんを誇らしく思っていた、そして今なお期待している様子がうかがえます。

それでもやはり、
「中1の5月で中学生が終わっていた」
という"気分"は、あなたのものであって、娘さんのではない。
ご自分の子育ての歴史の中で、彼女のケースをどう意味付けたら良いのか、ということに囚われているのではないでしょうか。
"自分の"気持ちを整理したいのであれば、"ドブに捨てた"という言葉もご自身にぶつけるべきかと考えます。
繰り返しますが、娘さんには関係のないことです。

3年間向き合ってきた相談者には、釈迦に説法でしょうが、「起立性調節障害」は、自律神経系の異常が原因で、あくまで"体の病気"とのこと。
本人が頑張ればどうにかなるというものではない。
にもかかわらず、それを乗り越えて高校に合格した娘さん。
彼女は勿論、それをサポートしてきたであろうあなたも素晴らしいなと思います。
いずれにせよ、安易に、何にでも意味を見出そうとする行為は、"筆者は"お勧めしません。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
⇒ 公式ブログ

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