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【編集部こぼれ話】居酒屋の流儀。

4月10日発売の『クロワッサン』995号「あたらしい東京」のこぼれ話をお届けします。

名居酒屋案内の記事で、太田和彦さんにお会いしました。太田さんといえば知るひとぞ知る、全国の居酒屋を足で回り、数々の名店ガイド本をものしているお方です。

取材で印象深かったのは、居酒屋とはふらりとのれんをくぐるもので、いちいち予約を入れるのは野暮である、が、しかたなく入れるのであれば、必ず六時までにすべき、というお話でした。

なぜ六時か? その理由は、夕方五時からお店を開くところも少なくない居酒屋は、六時を過ぎるまで予約の空席を作ってしまうと、一回転できるかもしれない大切な商機を逃させてしまうからであると。ふらりと訪れて、さっさと切り上げる、そんな客も多い居酒屋だからこその気遣いといえるでしょう。

さらに太田さんはこのように続けます。居酒屋で楽しむのは雰囲気である。そしてその雰囲気作りには自分も参加しなければならないと。居酒屋マイスターの意見はなるほど奥深い。

と、ここまで書いて思い出したのは知り合いのライターさんです。彼は毎日三時を回る頃になるとそわそわしはじめて、四時になるともう取るものも取りあえずというかたちで編集部を飛び出して行きます。聞くと、五時に開店する馴染みの居酒屋に一番乗りしないとその日を締めくくった気がしなくて気持ち悪いのだと。

ということで、ほぼ毎日、オープン前に店前に立っている彼を気遣い、店主は夕方五時の開店を四時五十五分、四時五十分、と五分刻みで早めることになり、ある時ついにそれは四時四十五分で定着したのだそうです。
「あの時は自分の家の前にバス停を少しずつずらしているような気分だった」と彼は笑っていました。
(編集KH)

こういうバス停は動きませんが。
こういうバス停は動きませんが。

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