くらし

大人の塗り絵にハマる!?│山口恵以子「アプリ蟻地獄」

  • イラストレーション・勝田 文
『大人の塗り絵 パズル!』。ルールは同じ色が隣り合わないよう塗るだけ、の新感覚パズルアプリ。無料。

文字通り、画面に表示されたイラストを四色の絵の具で塗り分けてゆくアプリ。イラストにはミカンなど単純な図形から、幾何学模様や親子パンダのように複雑な絵まである。

この説明を読んだ方は「なあんだ、簡単じゃん」と思われたことだろう。

私もそう思った。子供の頃はお絵かきが大好きで「きいちのぬりえ」を買ってもらって遊んだものだ。

塗り絵ならまかせなさい!

……と思ったら大間違い。このアプリ名に何故「!」が付いているか、塗り始めて思い知った。

このアプリには「線で境を接するパーツには同じ色を使えない」というルールがある。使える色が四色しかないのに、これは厳しい。

図形をじっと見て、色の配分を考える。最初は上手く行きそうに思えるが、塗っているうちにどんどんドツボにはまってしまう。何度やり直しても、必ずどこかで使える色が尽きるようになっている。

こんなの、塗り絵じゃない!

じゃあ何かというと、数学の幾何だ。ほら、図形の問題ですよ。

このアプリは数学的才能に恵まれている人でないと成功出来ない。赤点をとり続けて追試の常連だった私が出来ないのは、当然の結果です。

そう言えば、指揮者を始め優れた音楽家には数学の才能に恵まれた人が多い。楽譜と数式は通じるものがあるのだろうか。「君の数式には詩がある」と賞賛された学者もいた。

音楽も塗り絵も数学出来ないと上手く行かないって、こんな身も蓋もない結論で良いのでしょうか!?

山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。近著に『夜の塩』(徳間書店)。

『クロワッサン』994号より

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