料理しながら片づけるから、ものは多くても何も出ていない台所。
撮影・森山祐子 文・河野友紀
使うときに取り出し、終わったらしまう。 それを習慣化し、美しさを保つ。
どこにもほぼ物が出ていない、野口英世さんの台所。しかし実は持ち物は非常に多く、そのほぼすべては引き出しの中などに収納されている。
「効率よく料理をするためには、少ないアクションで動ける環境であることが大事。道具をしまい込んでいると取り出しづらいと思われがちですが、よく使うものは手が届きやすい場所に、そして置き方にひと工夫して“取り出しやすい収納”を心がければ、探す手間が省け、作業はスムーズに進みます」
滞りなく進むことで余裕が生まれ、ボウルや鍋など調理中に出た汚れ物を洗うすき間時間も見つけやすくなる。
「料理中にはねたり、調味料がこぼれたりといった小さな汚れを、すぐに拭き取ることも大事。キッチンペーパーを1枚出しておき、汚れたらさっと拭く癖をつける。それだけで掃除の手間が減り、キレイをキープできます」
1.みりん、酒、醤油は大きさを揃えて、ワイン用の栓をつける。
使用頻度の高い調味料と日本酒は、720ml瓶を購入し、冷蔵庫のドアポケットに収納。片手でフタを開けられるワイン用の栓を、キャップ代わりに使用。開閉が楽な上、液だれもなく清潔も保たれる。
2.引き出しを開けたときに目線が行く位置によく使うものを。
アイランドキッチン下部の引き出しは、内部が二段構造。視線が最初に行く上段の手前に使用頻度の高いボウル類を収納。下段は前板が高いので、手前に麦茶用ボトルなど背の高いものを入れる。
3.キッチンペーパーはシートタイプ。
シンクの左下にある浅めの引き出しには、ラップやビニール袋といった消耗品が。キッチンペーパーは最も手前に置き、使いたいときに引き出しを少し開ければさっと取り出せるようにしている。
4.毎回使う調味料は片手で使えるように工夫。
少ないアクションで使え、掃除が楽な置き方をすることが大事。塩・胡椒などのミル類は、無印良品の小物入れを置き、そこに立てて収納。オリーブオイルは液だれのないフラスコ形の容器に入れ替えて。
5.キッチンツールは頻繁に使うものを手前に。
コンロ左下の引き出しには火を使う調理で使用するツールを収納。よく使うものを手前に、横向きに置くと、引き出しを大きく引き出さずともツールの全貌をひと目で把握できるので、取り出しやすい。
6.かさ張る鍋のフタはサイズフリーを常用。
鍋のフタは大きさも形も違うため、意外と収納に困る。野口さんは幅広いサイズの鍋に使用できるマルチサイズのフタを使用することで省スペースを実現。可動式の仕切りを使い、引き出し手前に収納。
7.包丁やピーラーはすぐ掴めるかたちに収納。
アイランドキッチン上部の引き出しには、包丁などのツールが。包丁は種類や長さがひと目で把握できるよう横向きに。またピーラーやタイマーは、つかみやすいよう角度をつけて置く。
8.重い鍋はワンアクションで取り出せるように。
7の引き出しの下は、扉のない収納スペース。平台車を置き、その上にストウブなどの重い鋳物や鉄の鍋を。使うときは台車を引き出せばOK。死角になっているので、扉がなくても気にならない。
9.色や素材など、季節ごとに食器は入れ替え。
アイランドキッチンの食卓側の収納には、左側にガラス素材、右側に陶器や磁器の平皿を。カップ類や小皿、カトラリーは別の引き出し収納に。ストックルームにも器を収納し、季節で入れ替えをする。
野口英世(のぐち・ひでよ)●フードスタイリスト、料理研究家。テレビや雑誌などで活躍。広告のフードスタイリングや企業のレシピ開発も行う。著書に『使いやすい台所道具には理由がある』(誠文堂新光社)など。
『クロワッサン』994号より
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