「口あたりのいいものではなく、女性というものを相対的に描けたらと思って。友だちとして、娘または母の部分、男との関わり……」というとおり、二人の人生はかなりビターな要素に満ちている。恵まれているように見える詩織は、母としての役割を義母に奪われ家庭に居場所がない。紀子の結婚相手は定職に就かず、酒に呑まれては暴力を振るう典型的なDV夫だ。そんな二人はひんぱんに連絡を取り合い、互いの境遇を変えるべく、大胆かつ荒唐無稽ともいえる計画を立て実行に移す。詩織が「紀子の子どもを産んであげる」という。
「えっ? いったいどうやって?」という驚きの経緯は実際に読んでいただくとして、問題はその後の生き方だ。紀子の子どもとして娘を出産した詩織は、女二人で子どもたちを育てることを夢想する。が、思惑どおりにことは運ばず、女たちは傷つけ合う。裏切りの末、初めて二人の道は分かれ……。が、12年の歳月が流れたあと、思わぬ事件が起こり、再び交わることに。