くらし

多種多彩な画風の原点を見つめる。サントリー美術館 『河鍋暁斎 その手に描けぬものなし』

鳥獣戯画 猫又と狸 河鍋暁斎記念美術館 「猫の顔が納得いかず、紙を重ねて描き直した下絵です。こうした構想を経てから実際の作品を描いていたようです」

美人画、仏画、花鳥画に加え、妖怪画や風刺画などあらゆる分野でその画才を発揮した河鍋暁斎(かわなべ・きょうさい)。現在サントリー美術館で開催中の展覧会は、暁斎の画業の基礎となった狩野派の精神に目を向けながら、“画鬼”とも称された彼の足跡を振り返る。

「近年、暁斎は国内外で人気を呼んでいますが、もともと彼は江戸時代に狩野派でアカデミックな教育を受けて、古い絵画も学んでいる人です。日々の修練のなかで確かな技術を身につけたことで、その後の幕末、明治という新しい時代を迎えても、モダンな錦絵を生み出したり、美しさと恐ろしさが隣り合う幽霊画の世界観を作り出せたんだと思います」(サントリー美術館主任学芸員・池田芙美さん)

達磨図 イスラエル・ゴールドマン・コレクション (ジョサイア・コンドル旧蔵) Photo:立命館大学アート・リサーチセンター 「墨の濃淡の使い分け、眉や髭を描く際の細かい描き方など、暁斎の高い技術力が凝縮した作品です」

本展では約120点に及ぶ作品を7つのテーマにわけて展示。『鳥獣戯画』を深く学び、その発想を進化させた暁斎ならではの擬人化された猫や蛙をモチーフにした作品や、狩野派で学んだ筆力をいかんなく発揮した迫力あるサイズの『虎図』や『風神雷神図』。逆に手元で見ることを想定してハガキほどのサイズに緻密な彩色が施されている『惺々狂斎画帖』など、その多彩な作品群は、まさに“その手に描けぬものなし”と実感できる。

「暁斎の作品には古い絵画を題材に、そこに自分の個性を加えて描いたものが数多くあります。今回はそれらの作品の一部を原本と並べて展示しています。暁斎が先達から学んだことや作品として昇華したことを見比べることもできるはずです」

鷹に追われる風神図 イスラエル・ゴールドマン・コレクション (ジョサイア・コンドル旧蔵) Photo:立命館大学アート・リサーチセンター 「風を操る神様の風神が鷹に追われている戯画。今回の展示では関係深い狩野派の戯画とともに展示しました」

『河鍋暁斎 その手に描けぬものなし』
サントリー美術館 ~3月31日(日)
サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4東京ミッドタウン ガレリア3階) 電話番号03-3479-8600 10時~18時(金・土曜、および3月20日は~20時) 火曜休館(3月26日は開館) 料金・一般1,300円 *展示替えあり

『クロワッサン』993号より

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