【荻原魚雷さん】日々の家事を一手に担う、主夫たちの言い分とは。
撮影・岩本慶三 文・嶌 陽子
100均グッズや冷凍食品、頼れるものにはどんどん頼ります。
大量の本が整然と並ぶ部屋は、こざっぱりとした雰囲気で気持ちがいい。荻原魚雷さんは、ここ15年ほど、平日の家事をほとんどこなしてきた。もちろん、掃除もそのひとつ。
「一度に全部やろうとするとしんどいので、『今日はこの部屋』と順番を決めてやっています。見えない場所に関しては目をつぶるのも大事。塵ひとつない、というのは不可能ですから」
とはいうものの、細かい部分を掃除するためのグッズも常備。冷蔵庫のドアのすき間などを掃除する試験管用ブラシ、五徳の焦げを落とすプラスチックフォークなど。荻原さんがあれこれ試した末に辿り着いたものだ。
「フォークは最近改良しました。歯を1本折って、空いた部分で、お湯をかけながらこするとよく落ちるんです」
ほかにも、100円ショップのグッズで自作したまな板掛けや、「吸水性が高くパリパリに乾いて何度でも使える」と愛用中のセルロースクロスなど。日々、自分に合うものを見つけては暮らしの小さな不便を解消している。
「前は雑巾も自分で縫っていたけれど、100円ショップのグッズが登場してから意識が変わりました。頼れるものにはどんどん頼ろうと思っています」
冷凍の焼き鳥を使ったオリジナル焼きそばや親子丼。
食事作りも同様だ。買ってきた食材はすぐに刻んで冷凍し、ぱぱっと使えるようにしておくといった工夫をしつつ、冷凍食品や瓶詰なども活用する。
「冷凍食品の進化は目覚ましいので、利用しない手はない。冷凍の焼き鳥を使って親子丼や焼きそばを作ったりもします。揚げ物を食べたい時はお店で買ってきて、その代わり副菜は作る。全部頑張ろうとしなくても、そうやってバランスを取ればいいのでは」
友人たちと話していると、家事に自信がない人が多いように感じるという。
「僕から見ると、皆すごくよくやっているんですけどね。一体どの辺を理想にしているのかなって思うくらい」
家族に優しく接するためにも、疲れないことが何より大事という荻原さん。「料理も週3日作っていれば立派なもの」という言葉を聞いていると、なんだか気分が軽くなってくる。
〈荻原さん流、主夫生活のアイデア〉
常備してある食材で 日々の食事作りも手早く。
場所に応じて使い分ける 優秀掃除グッズ。
荻原魚雷(おぎはら・ぎょらい)●文筆家。1969年、三重県生まれ。新聞やウェブでの連載多数。読書に関する著作が多い。著書に『日常学事始』(本の雑誌社)など。
『クロワッサン』991号より
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