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認知症予防に始めたい「家事」で脳トレ ! 脳の強化法「脳番地トレーニング」とは?

認知症予防に「家事」は効く! その理由と具体策を、脳の強化法「脳番地トレーニング」を提唱する脳内科医の加藤俊徳さんに聞いた。
  • イラストレーション・オガワナホ 文・小沢緑子

毎日の家事は最高の認知症予防法、頭を使って工夫し、楽しむ気持ちで。

「家事は無意識のうちに細かく段取りを組んだり、予定外のことにも柔軟に対応したりと、脳をマルチに活動させる作業。さらに脳の一部分ではなく、全体にそれぞれ位置する各『脳番地』を連携させるため、家事を楽しみながらしている人は何歳になっても脳が活発に働き、元気で若々しい。結果的に認知症予防につながります」と、脳内科医の加藤俊徳さん。

脳番地とは脳内で同じような機能をもつ神経細胞同士の集合体で、主に8つの系統に分かれる。たとえば料理なら下図のように全方位的に効果を発揮。

「ただ、同じ家事でもマンネリ化していつも同じやり方、手順で行っていたり、あるいは義務感だけでイヤイヤ、手抜きをしながら惰性で行っていると、せっかくの家事の効果が得られません」

認知症対策のために家事で脳を刺激したいなら、やり方を少し変えて「脳番地を意識」した方法を取り入れると日常的に無理なく予防ができる。

「40代後半から体も脳も老化の方向に進みますが、脳も刺激を与えれば一生成長し続けます。脳番地は8つともまんべんなく鍛えるのが一番ですが、人それぞれ脳の使い方にクセや偏りがあります。自分の弱い脳番地を知り、そこから強化するのもいい方法です」

まずは下の記事でチェックを。

8つの脳番地とは?

1.伝達系脳番地
あらゆるコミュニケーションを通じて、意思の疎通を担う。

2.感情系脳番地
喜怒哀楽などの感情表現に関与。死ぬまで成長し続ける。

3.運動系脳番地
体を動かすこと全般に関係する。脳内で最初に成長する部分。

4.記憶系脳番地
情報を脳内に記憶し使いこなす。

5.視覚系脳番地
目で見たことを脳に伝え、視覚情報として整理し処理する。

6.思考系脳番地
何かを考えるときに深く関係し、脳の司令塔になる。

7.理解系脳番地
情報を理解し、目的のために役立てる。好奇心によって成長。

8.聴覚系脳番地
言語や音など、耳でとらえたことを積極的に聞き取ろうとする。

「料理」は脳を万能に刺激する。

1.伝達
「料理を誰かに食べてもらいたい」「喜んでくれる笑顔が見たい」という気持ちが、伝達系脳番地を刺激。

2.感情
料理が完成したときの達成感や喜び、「おいしい」と褒めてもらったときの幸福感が、感情系脳番地を揺さぶる。

3.運動
体を動かすときに欠かせない運動系脳番地。料理を作るときに手際よく手先を動かせるのは、運動系からの命令。

4.記憶
味見=以前作った料理の記憶を脳から引き出したり、直前の味と比較し吟味する行為で、記憶系脳番地がフル稼働する。

5.視覚
食材の鮮度をはじめ、調理中の変化や仕上げのタイミングを見極めるときなど、料理の全工程で視覚系脳番地が働く。

6.思考
料理の段取りや手順を考えたり、何品も同時進行で作ったり、アレンジ料理を考えているときも思考系脳番地が活躍。

7.理解
周囲を理解しようとしたときに発動される理解系脳番地。相手の好みなどを考えて献立を組み立てているときも働く。

8.聴覚
調理中、グツグツ、パチパチといった音も火の通りを見極める判断材料。音に意識を向けると聴覚系脳番地が活発に。

(NG)
□ いつも同じやり方。
□ イヤイヤやる。
□ 手抜きをする。

(Check!)まずは自分の脳の傾向を知ろう。

8つの脳番地のチェックの中で該当する項目が多いものは、その脳番地の働きが鈍っている可能性が。強化策の中でも、特に注目。

「50代以降、家事での認知症予防で、特に鍛えたいのは伝達系、感情系、運動系、記憶系脳番地の順。それらの具体策から取り入れていくのもおすすめです」

1.伝達系脳番地

□ 人に説明するのが面倒くさくなってきた。
□ 「どうして言ってくれなかったの?」とよく言われる。
□ ひとりでいるのが一番ラクだ。
□ 人と話した後、自分の発言を後悔することが増えた。
□ 「うれしい!」という気持ちがうまく表現できない。

2.感情系脳番地

□ 最近、ドキドキ、ワクワクすることがない。
□ ドラマを見て泣かなくなった。
□ 顔の表情が乏しくなった。
□ 急に気が変わることが増えた。
□ イライラをうまく抑えられない。

3.運動系脳番地

□ 利き手でない手はほとんど使わない。
□ 外出先ですぐに腰を下ろす。
□ 近くに出かけるときも、車やバスを使ってしまう。
□ 1週間のうち、外出するのは3日以下。
□ 最近、飲み物のコップをつかみそこなうことがある。

4.記憶系脳番地

□ 人と話す際、「えーっと」「あのー」と言うことが増えた。
□ 冷蔵庫に同じ食材や調味料がいくつもある。
□ 顔は思い浮かぶのに名前が出てこない。
□ スーパーなどで時々買い忘れをする。
□ 先の予定を立てられず、毎日が行き当たりばったり。

5.視覚系脳番地

□ 目の前にあるものを「ない!」と探してしまう。
□ 本や新聞を読むのが面倒になった。
□ 人混みで人にぶつかりやすくなった。
□ 空や星、月を見なくなった。
□ 間違い探しクイズが苦手になった。

6.思考系脳番地

□ ハッと気づくと、火にかけた鍋を焦がしていた。
□ ものごとを決めるのに時間がかかる。
□ 人混みで人にぶつかりやすくなった。
□ 旅行の計画を立てるのが面倒になった。
□ 買い物をするときに、以前より迷うようになった。
□ 新しいことに挑戦する気持ちが湧いてこない。

7.理解系脳番地

□ テレビを見ると、つい文句や否定ばかりが口に出る。
□ よくわからないことがあっても、「まあ、いいか」と流してしまう。
□ 流行に興味がなくなった。
□ 相手が違う世代だと会話が続かない。
□ 会議などで話についていけないことがある。

8.聴覚系脳番地

□ 最近、新しい歌を覚えられない。
□ テレビを見るとき、字幕に頼ってしまう。
□ 一方的に話をしてしまう。
□ レジで若い店員が言ったことがわからず、聞き返してしまうことがある。

衰えが気になる脳番地の強化策は次ページへ。

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