くらし

枠にとらわれない、のびやかな美の世界。『民藝 MINGEI – Another Kind of Art展』

  • 文・嶌 陽子
大矢真梨子 Modern Photographs of MINGEI 《型吹硝子菊型食籠》本展のために写真家・大矢真梨子さんが日本民藝館にて所蔵品の数々や建物の細部を撮影。会場内に展示されている。

1925年、思想家の柳宗悦(むねよし)によって名付けられた、無名の職人たちによる日常の工芸品「民藝」。その魅力に光を当てた展覧会が開催中だ。

ディレクションを務めるのは、プロダクトデザイナーであり、日本民藝館館長を務める深澤直人さん。「民藝の奥深さを、デザインに関心を持つ人々と分かち合いたい」という思いを込め、同館の所蔵品約1万7000点の中から146点をセレクト。その展示のほか、もの作りの様子をとらえた映像、民藝の精神を受け継ぐ現在の作り手たちなども紹介。さまざまな角度から民藝の魅力を掘り起こす内容となっている。

《スリップウェア両手付酒杯》 イギリス 18世紀後半 ポセット(ミルク酒)を入れるためのもの。スリップウェアの技法はイギリスで生まれた。(日本民藝館蔵)

印象的なのは、日本民藝館の所蔵品146点の展示法。18のケースなどに分かれて並んだ品々は、用途やジャンル別ではなく、深澤さんの直観にもとづいて分類されている。制作者や制作時期といった情報は会場内には一切なく、18のケースそれぞれに深澤さんのシンプルで率直なコメントが書かれているだけ。その助けを借りつつ、観る側は理屈や先入観なしに、ひとつひとつのものが持つ美しさとまっすぐ向き合えるのだ。

《朱漆酒器》 沖縄 琉球王朝時代 19世紀 中国の影響が強い琉球漆器の中にあって、比較的シンプル。デイゴの木が素地。(日本民藝館蔵)

「柳宗悦さんは、知識や先入観にとらわれず、自由な心で純粋に対象物を観る『直観』ということを、とても重視していました。今回は、深澤さんの感性とともに作品を楽しんでいただける展示になっていると思います」(21_21 DESIGN SIGHT 広報担当・岡田祥太朗さん)

器、生活道具、衣服、布など。国や時代も異なる民藝品の数々は、大胆で力強かったり、何ともいえない愛嬌があったりと、のびやかな魅力を放っている。深澤さんがディレクターズ・メッセージで述べている「形式や様式にしばられない飄々とした態度。一定の仕上がりを求めない自由さ」は、いつの時代にも輝きを失わない。

《火鉢》 出雲(島根) 昭和時代 1940年代 イカ漁の漁師が、船上で手を温めるために使用していた。陶製。(日本民藝館蔵)

会場内には、柳宗悦が心のうちを短い句で表現した「心偈(こころうた)」の展示もある。そのうちのひとつが「打テヤ モロ手ヲ」。美しいものを見たら両手を叩いて素直に喜べ、という意味だ。日々の誠実な暮らしの中から、自然と美しい日用品が生み出されること。それらを慈しむこと。モノや情報があふれる今の時代において、本展はその喜びをあらためて思い出させてくれる。

撮影・吉村昌也

『民藝 MINGEI – Another Kind of Art展』
21_21 DESIGN SIGHT  ~2019年2月24日(日)
21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2(東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン内)電話番号03-3475-2121 10時~19時 火曜(12月25日を除く)、12月26日~1月3日休館 料金・一般1,100円

『クロワッサン』988号より

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