くらし

折に触れページをめくりたい、童心に戻れる美しい絵本。

  • 撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり

物語がなくても絵本は描ける。助言をもらって『ふしぎなえ』に。

本を開くとそこは迷宮の入り口。『ふしぎなえ』の安野ワールド。安野さんのデビュー作で、これは1968年に月刊絵本『こどものとも』に発表された当時のもの。いまなお子どもから大人まで魅了するロングセラーだ(福音館書店)。

安野さんの初めての絵本『ふしぎなえ』が出版されたのは1968年、42歳のとき。それから今年でちょうど50年になる。階段を上がっているはずがいつのまにか階段を下りていたり、不思議な世界にどんどん引き込まれていく文字のない絵本だ。きっかけになったのは小学校で美術を教えていたとき、教え子の保護者に福音館書店の社長、松居直さんがいたことだった。
「絵本を描きませんかって声をかけてもらったんですね。でも絵本を作れるような話がないんですと言ったら、話なんてなくていいじゃないですかという言葉が返ってきました。そうか、それでもいいんだと思って、言葉のない絵本を描くことにしたんです」

ヒントになったのはエッシャー。安野さんはエッシャーのだまし絵を雑誌で見て興味を抱き、自分の空想の世界とクロスする絵だと気づいたという。
「子どもの頃、鏡を床に置いて覗き込むのが好きでした。鏡の中には思いもかけない世界が広がっていたんです。左右反対になるし、天井が下に見える。上から吊り下がっているはずの電球が下から生えているように見えますからね。階段もさかさまに続いているし、そんな現実と虚構が交錯する世界を描いたのが『ふしぎなえ』なんです」

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