丘の上の高台に立つ岡本さんの家。庭は玄関脇の階段を下りていった場所にある。道路に面していないため、ぐるりと植物に包まれるようなプライベート感のある空間だ。
この庭づくりを始めたのは、11年ほど前。植えた時には小さな樹だったロシアンオリーブはすくすくと育ち、今では庭を見下ろすリビングの窓に届くほど大きくなった。
「引っ越してきて最初の数年間は、どういう庭にしようかなと、あれこれ考えているだけの妄想タイム。いざ、やるぞと決めたら一気に土を耕して、いろいろな種類の草木を植えました。でも、庭づくりが終わってしまったら寂しいので、ずっと未完成のままがいいという気持ちも。いまだに、今後のプランを妄想し続けています」
かつては庭の一部に小さな畑を作って、夏野菜を育てていたこともあるが、今はあまりきっちりと区画されていない、自然な風情を楽しんでいる。
「私の庭仕事は、“ものぐさガーデニング”です。庭を持ってみると、園芸学部で学んだような造園をするのは難しいとわかりました。知識と実践は違うものだなあと。本当はいくらでも庭にいたいし、雑草を抜いたり剪定したりと、することもたくさんあるのですが、なかなか時間がありません。そこで、どうやったら、それほど手をかけずに自分が癒やされる庭にできるかということを考えるようになったんです」
完ぺきを目指さないのも、案外いいものだという。たとえば、春に生えてくるボリジのこぼれ種が飛んで、去年とはまったく違う場所から芽を出した。わさわさとした庭で思いがけない発見をするのは、宝探しのようで楽しい。
見上げた先でのびのびと枝を広げているビワの樹も、鳥が種を運んできたのか、自然に根付いたものだとか。
「ごく小さい苗が生えているのを見つけて、そのまま育ててみたら、ずいぶん大きくなりました。毎年、初夏に実がなるとビワシロップを作ります」