夏休みを目前に控えた教育・育児特集では、子どもが初めて手にする成績通知表に注目。<1年1学期の成績表がいったいどれほどの意味を持つのだろう>と疑問を呈し、各分野で活躍する著名人に小学校時代の成績について尋ねています。
誌面には、ドイツ文学者の鈴木武樹さん(1934-1978)、SF作家の星新一さん(1926-1997)、歌手の太田裕美さん、漫画家の里中満智子さんなど多彩な顔ぶれ。見出しに<どんなに成績が悪くても心配ないという結論>とあるように、勉強ができなくてもあせる必要はない、好きなことを大切にすべし、というのが大方の論調です。
その最たる意見が、美術家の横尾忠則さんのこのひと言。3歳ぐらいから絵ばかり描いていたという横尾さんは、成績も優秀で学校が大好き。しかし、大けがで学校を長く休んだことをきっかけに勉強についていけなくなり、得意なものは絵しかなくなったといいます。
<ぼくなんか、どうにもならなくても、とにかく絵にかじりついて来たからここまでこられたようなもんですね>
横尾さんといえば1960年代、劇場の前衛的なポスターで一躍時代の寵児となりました。1980年代からは画家として絵画の制作に注力。82歳の現在も積極的に創作活動を行っています。
ひたすら絵に没頭し、自らの世界を追求し続ける横尾さん。その後の歩みも加味して読むと、41歳で発せられたこの言葉がより一層力強く迫ってきます。