予約のとれない料理教室「白崎茶会」の、豆乳ヨーグルトで作るクリームチーズのレシピ。
撮影・青木和義 文・越川典子
豆乳で作ったって、わかるかしら。試してくださいね。
神奈川・葉山の海辺に立つ一軒の古民家。全国から熱心な生徒が訪れるここは、予約がとれないことで有名なオーガニック料理教室「白崎茶会」。この教室で、今、じわじわと人気を集めているレシピがある。
「クリームチーズ」である。
「チーズ」といっても、乳製品ではない。100%植物性の「豆乳ヨーグルトで作ったクリームチーズ」なのだ。
「黙ってテーブルに出して、これが豆乳から作ったとわかる人はほとんどいません。種明かしをすると、必ずもう一口食べて味を探そうとします。それくらい、ふつうにクリームチーズです」
と白崎裕子さんは笑う。
実は、白崎茶会には、豆乳ヨーグルトを使った定番の“チーズ”レシピが今までもあった。「発酵バター」や「豆乳チーズの素」がそれだ。
「発酵バターはほのかな酸味のある植物性の万能バター。豆乳ヨーグルトと白玉で作る豆乳チーズの素は、加熱用。焼くと、とろとろ、もちもちっと、本物のチーズのような食感です」
パンにグラタン、ピザにと、白崎茶会では大活躍。ほかにも、味噌で粉チーズを作ったり、豆乳でクリームソースから練乳、カスタードクリームまで作ってしまう。
植物性の材料だけで乳製品レシピを考える理由は何だろうか?
「乳製品を食べたいと思っても、乳アレルギーがあって食べられない人がいます。ベジタリアンの人も、植物性のものを探していますし、動物性脂肪の取り過ぎに気を使っている人もいます。そういう人も、そうでない人も、誰もが我慢することなく、誰もがおいしいと思えて、誰もが健康になれる。そんなレシピを考えたいと思っているんです」
新定番となった「クリームチーズ」も、それをもとに新たなレシピが次々と生まれている。
基本の「クリームチーズ」の作り方は、いたって簡単。材料もたったの3つ。
・豆乳ヨーグルトを水切りしたもの
・ココナッツオイル(香りのないタイプ)
・海塩
これらをよく混ぜ、乳化させるだけ。
豆乳ヨーグルトは「種菌で手作り」か「購入」する。
乳酸菌などを含む発酵食は毎日、毎食、食べたい。
「ココナッツオイルを使うのは、24℃以下で固まる性質を利用して、しっかり乳化させるため。他のオイルと代謝経路が違って、肝臓で素早く分解されるので、体脂肪になりにくいという健康効果もあります。それに、オイルの中では、最も酸化しにくいんですよ」
少し前までは、豆乳ヨーグルトを手に入れるのも難しかったけれど、今は、市販品を購入できるし、植物性の種菌で簡単に手作りすることもできる。
「一度作ってみてください。いつも発酵食が冷蔵庫のストックにあるという安心感にもつながると思います。発酵食は、毎日、毎食、何かしら摂ってほしいです。それは、腸内環境を整えることで、体調も変わってくるからです」
白崎さんは若い頃、アトピーや花粉症を発症したことがあるという。お化粧もできない。外出もできない。
「いろいろな本を読んで、すぐに始めたのが『砂糖断ち』でした。すると、いつの間にか、かゆみがなくなって、肌もどんどんきれいになっていく。驚くほどでした。環境のこと、身体のこと……本を読み継いでいくと、食について考えざるをえない。そうして行き着いたのが、発酵食かもしれません」
玄米を分づき米にして、出たぬかでぬか漬けを作る。春は梅を漬け、梅酢や梅干しを作る。冬に仕込むのは味噌だ。白菜がおいしくなれば、白菜漬けを。米麹には野菜や魚、何でも漬ける。
「それが自然な暮らし。自然な食事。長い年月、発酵食があって、穀類や海藻、魚介類が日本人を守ってきた。私自身も、少しの間でも、ぬか漬けを食べないでいると調子が悪いです(笑)」