藤野の飲食店や小売店の中には、代金の一部を「萬」で支払うことができる店もある。池辺さんの妻・澄(すみ)さんが営む天然酵母パンの店『ス・マートパン』もそのうちの一軒だ。定価350円の黒糖角食パンなら、300円+50萬で買えるという仕組み。「店を始めた頃は自分で食べるためのパンを焼く延長という感覚だったので、お金をもらうことには少し抵抗がありました。その分、地域通貨を使ったやりとりは気が楽なんです」と澄さん。
「商いをしている人に対しては、100%『萬』の支払いだと商売が立ち行かなくなってしまうので、『円』と『萬』を併用します。売る人は商品を地域の中でプロモーションできるし、買う人は、少しだけお得に、しかも顔の見える相手から物を買うことができる。お互いにとってメリットがあり、しかも『円』のお金も外に逃げずに地域の中で回りだす。『萬』と『円』が循環することで、地域の経済が活性化するんです」(池辺さん)