【荻原魚雷さんの場合】家庭円満の夫に聞く、捨てられない極意。
撮影・清水朝子 文・嶌 陽子
相手に変えてほしい部分がある時は、5年くらい、気長に待ちます。
冷凍庫から小分けして保存してある肉や野菜をさっと取り出し、フライパンで炒める荻原魚雷さん。そこにうどんを投入して、だし粉をふりかけ、手慣れた様子で混ぜ合わせる。
「このままだと焼きうどんになるし、ここにお湯を注げばおつゆのうどんに。妻が帰ってきた時に、どっちがいいか聞いて仕上げます」
会社員として働く妻と2人暮らし。主に読書や古本について著述する文筆家として自宅で仕事をしつつ、料理、洗濯、掃除など、平日は家事の大半をこなしている。
「僕は親戚付き合いも含めて対外的なことが苦手なので、妻がすべて担ってくれています。その分、僕は家の中のことを担当。家事も毎日続けていると、小さな発見が楽しいんです。なかなか落ちなかった五徳の焦げが、プラスチックフォークを使ってみたら簡単に落ちたとか、100均で便利な家事グッズを発見したとか。最近のヒットは、ざるの網目もきれいに洗える“プラタワ”っていうブラシです」
もちろん、家事は無理し過ぎないことが前提。食事も、疲れて作りたくない時はお惣菜を買うことだってある。手の込んだ洋風料理は、休日、妻が作ってくれるので、荻原さんが普段作る料理は、シンプルな和食や中華だ。
「行きつけの飲み屋でおいしい料理を食べたら、作り方を聞いてみたり、飲み屋で知り合った学生さんに、『あそこのスーパーが安い』と聞いたり。情報源は飲み屋のことが多いですね」
料理を作ると、妻はとても喜んでくれるという荻原さん。家事を担う側が抱えがちな、「家事をしても評価されない」という悩みは全くないのだろうか。
「人間、自分がやらないことは気づかないもの。だから僕も妻も、お互いに家事を頑張ったら相手にアピールしますよ。僕なんて、妻が出勤前でバタバタしているところを、きれいにした換気扇の前まで連れて行って『すごいでしょ』って見せますから(笑)」