【青木武紀さんの場合】家庭円満の夫に聞く、捨てられない極意。
撮影・岩本慶三 文・嶌 陽子
育児も一段落、今後は仕事がしたい。妻も後押ししてくれています。
「息子が来年の春、高校を卒業するんです。娘も来年は高校進学。だんだん手がかからなくなってきたので、僕もそろそろ次のステップに行こうかな、と考えているんですよね」
気持ちよく整えられた自宅リビングでそう話す青木武紀さん。漫画家である妻の桜沢エリカさんが長男を妊娠したとわかって以来、17年間、青木家で家事と育児を担当してきた。まだ「主夫」や「イクメン」という言葉が浸透していなかったころだ。
「当時、『仕事を辞めて主夫になって』とエリカに言われ、ふたつ返事で引き受けました。結婚当初から、エリカと僕には収入格差があったし、才能がある彼女に仕事を続けてほしかった。だから僕たち夫婦には、その形が合っていると思ったんですよね。ジョン・レノンも、第二子が生まれた時に音楽活動を休止して子育てに専念したと聞いて、『そうか、レノン先輩(パイセン)がいるのか』って。僕自身は、子どものころ、父親と2人で遊んだことがほとんどなかったので、逆に自分は子どもとの時間を大事にしたいという気持ちもありました」
子どもの世話をしながら、掃除や洗濯、料理など、家の中のあらゆることを担当。以前から料理は少しはしていたものの、和食を中心に本格的に覚えていった。今も、インターネットで検索するなどして、日々、料理のレパートリーを増やしている。
「どの家事も苦痛と思ったことはないです。むしろ、家事って体力を使うから、男性のほうが向いていると思うことがよくあります。僕より、世の中の主婦のほうがよっぽどえらいと思いますよ」
それでも、作った料理に妻が喜び、感想を言ってくれるのがうれしいという。
「僕も、彼女が時々家事を手伝ってくれると『ありがとう』と言っていますよ。服装についても『似合うね』とか、思ったことは伝えるようにしています」