島田順子さんのいつも胸の中にある言葉“なんじ自身を知れ”
本好きの著名人に“人生で出会った一冊の本”を聞くインタビューシリーズ。今回はファッションデザイナーの島田順子さんです。
撮影・岩本慶三 文・嶌 陽子
島田順子さんが、森本哲郎の『ソクラテス最後の十三日』を手にしたのは、20年ほど前。すでにトップデザイナーとしてフランスと日本を忙しく行き来していた頃だった。
「哲学に興味を持って、プラトンに関する本などを読み始めたのは、娘のバカロレア(フランスにおける大学入学資格試験)がきっかけです。“プラトンについて論述せよ”という問題が出たと聞いて、親の自分が何も知らないのは恥ずかしいと思ったの。それに、フランスでは、友だちとの食事やお酒の席でのちょっとした会話にも、哲学の話が自然と出てくるから、多少でも知っていないと、話についていけないんです」
そんな時期に、日本の書店でふと目にしたのがこの本。プラトンの師であったソクラテスという名前はもちろん、“最後の十三日”というタイトルの言葉が気になって、手に取った。
古代ギリシアの哲学者、ソクラテス。無実の罪に問われた彼が、死刑を目前にして、獄中で弟子たちとの議論や思索を続ける。脱獄すべきだと友人や弟子たちに勧められるも、法を犯すことをよしとせず、かたくなにそれを拒む。そんなソクラテスの最後の13日間を描いた小説だ。
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