だしの効果は絶大!
毎日の減塩テクニックvol.2。
うまく減塩する生活のヒントと、いろいろな料理に応用できる調理の基礎となるテクニック。日々使えるコツを女子栄養大学・栄養クリニック教授の蒲池桂子さんに教えてもらいました。
「いま減塩がクローズアップされているのは、日本人の高齢化が急速に進んでいることが大きく関係しています。高血圧や生活習慣病のリスクは男性が45歳以上、女性が55歳以上になると高まってくるんですね。減塩は血圧を直接的にコントロールでき、肥満や高血糖がもたらすさまざまな病気を回避することにもつながると言われています。でも減塩は意識しないとできません。カップめん1個で約5g とか、「おいしいもの」は塩分も多いので、不用意に摂り過ぎてしまうのです。私も50歳を過ぎ、生活習慣病の予防のために減塩生活を送っています。作る料理は超薄味で、とてもほかの人にはすすめられないんですけど(笑)」。
Q.佃煮、塩辛、漬物など、しょっぱい加工食品は食べないほうがいいですか?
塩分で重要なのは摂取するトータルの量なので、一概にいいか悪いかは言えません。たとえば佃煮も、少しの佃煮でごはんを食べてその味を口の中に残したまま、さらに野菜などを醤油なしで食べる、そういう食べ方なら問題ないんです。日本の食事の優れている点は、口の中でごはんとしょっぱいものを合わせて、よく噛むことによって新しい味を作り出していく口中調味です。ごはんには塩分が含まれませんから、昔は塩気の強いおかずが必要で、佃煮、塩辛、漬物などがよく食べられたわけですが、日本人の栄養状況も疾病構造もいまとでは大きく異なります。しょっぱい加工食品でも食べる量が少なければ塩分摂取は少なくてすむので、ごはんのお供にほんの少しぐらいなら、あまり気にすることはないと思います。
Q.カンタン手軽で、確実に減塩できる方法はありますか??
A.
食卓の上から醤油差しをなくすのは、単純ですが効果的な方法です。つい手が伸びるのを防止します。調理でいうと、だしのうまみは塩を引き立てて減塩効果が高いので、だしはどんどん活用してください。煮物は具材を炒めると油でコーティングされるので、薄味でもおいしくできます。意外に塩分の摂り過ぎを防いでくれるのが甘酢。酢3に対して砂糖1ぐらいの割合ですが、これを使うと生野菜にノンオイルドレッシングをかけて食るより、塩分が少なくてすみます。
食材で減塩の物足りなさを補う方法もあります。グルタミン酸豊富な野菜、にんにく、玉ねぎ、トマトなどと一緒に煮込むような料理を作るといいんです。私のおすすめはトマトの味噌汁。うまみが濃くなって味噌の量を控えることができます。それから唐辛子とかわさびとか、辛味のものをちょっとつけて食べるよう習慣にするのも一案。舌が敏感になって、塩分が薄くても素材のうまみを感じとりやすくなります。
Q.意外に塩分が入っている食品にはどのようなものがありますか ?買うときに塩分量をチェックするには??
塩分をあまり感じさせない味なので要注意なのが、ちくわ、はんぺんなどのねり製品です。魚肉のすり身には粘りを出すために1・5%ぐらいの塩分が入っているんです。それが食品のうまみで感じにくくなっていることと、ちくわやはんぺんは醤油をかけて食べることが多いのも危険です。
うまみの強いものは、塩分が入っていないように感じてしまうことがありますが、そこはちゃんと成分表示を見たほうがいいでしょう。今年の4月から食品表示法が変わって、従来は換算が必要なナトリウム表示のみでしたが、塩分(食塩相当量)の表示が義務づけられるようになりました。加工製品には5年間、生鮮品には1年半の猶予期間が設けられていますが、数年のうちに店頭での塩分量のチェックが簡単に。ナトリウム表示の場合は、ナトリウム量に2・54を掛け、1000で割った値で塩分量(g )がわかります。
朝8時は要注意!? 毎日の減塩テクニックvol.1はこちらから。
https://croissant-online.jp/topics/39147/
◎蒲池桂子さん 2003年4月、女子栄養大学栄養クリニック主任に。生活習慣病栄養相談や企業向け栄養コンサルティングなどを行っている。
『クロワッサン』911号(2015年10月25日号)より