日本酒のプロに聞く、いいこと尽くしの「お燗」の愉しみかた
撮影・文 藤井存希
燗酒が主役!「久保田」 × ミシュラン東京掲載「赤坂 渡なべ」のペアリングイベント
世界でも珍しい、飲み方に“温度帯がある”お酒、日本酒。
温めた燗酒は体の血行を良くし、内側から温めます。また、体温に近い温度のため冷酒よりもアルコールが早く吸収されるので、飲み過ぎを防ぐ効果もあるのだとか。
今回は、主催する朝日酒造「久保田」の酒と、会場となった「赤坂 渡なべ」の料理とともに、燗酒と和食のペアリングの愉しみかたを知るべく、イベントに参加してきました。
今回のイベントでは、旬の味覚を会席仕立てにした特別コースと、久保田の代表銘柄「千寿」「萬寿」シリーズの中から数種類の燗酒を合わせていきます。
燗酒を担当するのは、JSA SAKE DIPLOMA認定資格を有し、国内外で日本酒の魅力を伝えている酒匠の佐藤厚一郎さん。
前肴は、朱色の漆器に盛り合わせた、ふぐの白子の茶碗蒸し、鱒の助砧巻き、無花果を練り込んだチーズなど。合わせるお酒は、「久保田 千寿 吟醸生原酒」をロックと燗の、2つの温度帯で。氷入りでまろやかさを増した生原酒は冷菜と合わせ、60度の熱燗は熱々の茶碗蒸しといただきます。
「お酒の温度と料理の温度を合わせるのがポイント」と佐藤さんが言うように、鍋や汁物、おでんなど、冬の食卓に登場するメニューは燗酒と相性が良いのだとか。
燗酒ペアリングに欠かせない、出汁割りも登場。昆布とまぐろ節から引いた一番出汁の「お椀」に合わせます。
家庭で作るなら「出汁に対して1/4の量の熱燗を入れるのが適量。出汁パックで濃いめにとったり、鍋の残り汁を使うのもおすすめ」(佐藤さん)
終盤に登場したのは「ずわいかに 柚子釜みそ焼き」と「久保田 萬寿 自社酵母仕込」の熱燗。
ずわいかにの旨みを閉じ込めた柚子釜は、一口めはそのままで。二口めに70度の熱燗を合わせると、柚子釜の味わいが幾層にも重なっていくかのよう。まさに“別物”を食べているような変化です。
「萬寿 自社酵母仕込を70度まで上げると、特有の穀物感が味噌の味わいに寄り添う。『久保田』は雑味がない澄んだお酒と表現されますが、それは自社酵母の上品さ、醸造技術の賜物です。温度を上げても嫌な要素が出てこないので、燗酒にも合うんですね」(佐藤さん)
甘味は、温かい甘酒とチョコレートアイスのアフォガード。
イベントでは久保田の酒粕を使った甘酒でしたが、市販の甘酒でも代用可能だそう。目を見張るほどおいしい絶妙なペアリングで、さらに自宅でも真似しやすいのが嬉しい!
最後に、自宅で燗酒を作る際のポイントを佐藤さんに伺いました。
1. アルコールが飛ばないように短時間(2~3分)で燗にする
2. 「燗冷まし」は、いったん高い温度に上げてから自分の好きな温度まで下げる
簡単な熱燗の作り方:電気ケトルで湯を沸かし、スイッチをオフにしたあと徳利やチロリ(日本酒を温めるときに使う酒器)を器ごと入れて好みの温度に仕上げる
「赤坂 渡なべ」では「久保田 千寿」「久保田 萬寿」シリーズを愉しむペアリングイベントを定期的に開催。上質な料理と理論を基に、ユニークな日本酒のペアリングを愉しめますので、ぜひ注目を。
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