能登通いで高まった防災意識を生かして。現地のホームセンターで防災グッズ探し──防災士・常盤貴子さん
撮影・太田太朗 スタイリング・大塩リエ ヘア&メイク・ナライユミ 文・兵藤育子 協力・輪島フィルムコミッション
能登を第二の故郷のように慕う、常盤貴子さん。NHK朝ドラ『まれ』の撮影で滞在していた頃は、自身の過渡期でもあったと振り返る。
「俳優としてというより、人としてどう生きるかを考えていた時期でした。なので、撮影の合間にひとりでいろんなところへ行って、地元の人と交流して。心をオープンにするとこんなに楽しいんだ!と気付き、自由を謳歌するようになったんです」
2024年1月に発生した地震と、同年9月の豪雨により、愛する場所が被災地となってしまってからは、仕事でもプライベートでもさまざまな形で支援してきた。そんな常盤さんを震災前から知るのが、輪島市で飲食店『mebuki―芽吹―』を営む池端隼也さん(別記事参照)。震災前は同市でフレンチの店を開いていて、そこに常盤さんが来店したのが二人の出会いだった。
「震災直後、まだ復旧がほとんど進んでいないような頃から常盤さんは能登に来て、僕たちが飲食店仲間と毎日やっていた炊き出しを手伝ってくれました。その後、少しずつ日常を取り戻すにつれ、能登を訪れる人も少なくなったのですが、常盤さんは今も変わらず足を運んでくれて、本当に心強いです」
震災時、多くの人を支えた地域密着ホームセンター
「被災から2、3年経つと、直後とは違う問題が顕在化しやすくなるともいいますよね。歴史があって、人のつながりが強固な地域だからこそ、私みたいな外の人ができることもあるかもしれないと思っています」(常盤さん)
そんな中、ボランティア活動をしている人の多くが、防災士という民間資格を取得していることを知る。防災に関する正しい知識や技能を持つことは、受け入れる地域の人の安心にもつながるのではないかと考えた常盤さんは、今の自分に必要なものと迷わず取得。そんなわけで防災意識は高く、能登の人たちとも日頃から情報共有をしているのだが、あるとき、今の能登のホームセンターは防災グッズの品揃えが抜群に充実していることに気付いた。防災グッズの最新動向を知るべく訪れたのは、七尾市にある『ホームセンターヤマキシ田鶴浜店』。2024年の地震では、この店舗も半壊状態となる大きな被害を受けている。
「棚の商品が床に散乱するだけでなく、天井パネルやシャッターが落下し、防火用スプリンクラーも折れて水浸しに。一刻も早い営業再開を望む声が思いのほか多く、他店舗のスタッフが片づけの手伝いに駆けつけてくれました。そして安全な場所を確保し、1月9日から生活必需品の半額セールを行ったんです」(店長・中川亮さん)
断水が発生していたため、ペットボトルの水と、井戸水などを汲むためのポリタンクが真っ先に売れていった。
「ほかにも近隣の避難所には、毛布やファンヒーターなど防寒対策の商品を物資としてお届けしました。ホームセンターは災害時に食料品や日用品などの物資を提供する、防災協定を行政と締結するところが多くなっています。うちは当時からその協定を結んでいたので、スムーズな対応ができました」
意見・要望を取り入れた充実の防災コーナー
その後も部分的に営業しながら復旧作業を進めて、リニューアルオープンできたのは5月のこと。
「防災コーナーはもともとありましたが、実際に役に立ったもの、こういうものが欲しかったというご意見も参考にして、各売り場から防災に使える商品を集めて、現在の形になりました」(防災コーナー担当・鹿山海渡さん)
鹿山さんの案内のもと、防災リュック、家具の転倒を防ぐ突っ張り棒、懐中電灯、エアマット、カセットコンロ、消火器などが並ぶ棚を見渡す常盤さん。
「選りすぐりのラインナップですね。震災を経て、ずっと需要のある商品はどれですか?」
「断水の苦労を記憶している人が多いようで、コンパクトに折りたためるポリタンクや、水のいらない災害用トイレは、備えとして常に売れています。ブルーシートも、雨漏り防止や目隠しなどいろんな用途で使えるので、買い求める方が多いです」(鹿山さん)
防災リュックの中身を改めて考えてみる
地震のみならず水害対策の商品も比較的多いのは、やはり過去の教訓といえるだろう。車が水没してドアが開かなくなったとき、女性の力でもガラスを割れるような緊急脱出ハンマーなど、使い勝手が工夫されたアイテムも。
「土のう袋もたくさん売っていますね。こうやって見ると豪雨や台風の備えは、地震に比べるとそこまで自分はできていなかったことに気付かされます」
さらに常盤さんが目を留めたのは、防災リュックの中身をイラストでリストにした、売り場のボード。
「輪島で被災したある人からは、防災リュックを持って逃げたものの、避難所から自宅へ戻ってきてから、ようやくリュックを開けて水を飲んだと聞きました。だから災害発生時は、とにかく身の安全確保が最優先。避難所へ行けば最低限の物資はあるでしょうから、防災リュックの中身は直後に使うものというより、少し落ち着いてから必要なものという視点も、もしかしたら必要なのかもしれませんね」
災害の経験を生かしたラインナップを俯瞰し、実際に手に取ってみることは、防災の大切さを再確認すると同時に、備えを見直すよいきっかけにも。
「防災グッズはどんどんグレードアップしている一方、変わらず備えておきたい定番も把握できて、とても参考になりました。同じアイテムでも必要となるシーンや、使い方が変わることを生の声として教えていただけたので、自分の備えにも生かしたいです」
訪ねたのは…
ホームセンターヤマキシ田鶴浜店
福井県と石川県で店舗を展開するホームセンター。食品や日用品、プロの職人向けの資材関係に至るまで、多種多様な商品を販売。田鶴浜店は2024年の震災で半壊し、同年5月にリニューアルオープン。
人気の防災用品&お役立ちグッズ
緊急簡易土のう
水で膨らむ土砂いらずのすぐれもの
豪雨や台風の浸水対策に欠かせない土のう。自宅にある程度の土砂を用意しておくのが難しい場合は、土砂が不要な使い切りタイプのこちらが便利。水を含ませてもみ込むと5分で膨らむので、設置も簡単。10枚 4,928円。
防火手袋
火やガラスなどから手をガード
ガラスの破片や熱などから手を守るため、アウトドアでの火気の作業にも重宝されている、牛床背縫い手袋。「防災リュックに軍手は入れているのですが、このくらい丈夫だと安心ですね」。冬場は防寒対策にも。1組 297円。
LEDキーチェーンライト
いつも使うものにぶらさげて
災害時、スマホのライト機能は極力使いたくないもの。10円玉ほどのサイズながら、ボタンを押すと手元をしっかり照らしてくれるLEDライト。自宅の鍵などにつけて普段から使っておけば、いざというときも安心。110円。
防災用圧縮タオル
多用途なタオルをコンパクトに
タオルはいくらあっても便利なものの、かさばるのが難点。こちらは袋から出してほぐしてすぐに使える、真空パック加工されたフェイスタオル。「水害のときでも、開封前ならタオルを濡らさず清潔に保てますね」。5枚 1,097円。
小型拡声器
さっと取り出してすぐに使える!
小型&軽量なのにパワフルな拡声器。折りたたみ式のコンパクトサイズで、持ち運びにも便利。ボタンを押すだけの簡単な操作なので、緊急時も慌てず、焦らず使うことができる。サイレン機能のほか、録音・再生機能も。1,078円。
蓄光型エマージェンシーホイッスル
居場所を知らせる、命のお守り
閉じこめられたり、身の危険を感じたときなど、助けを呼びたいときの命綱に。軽くて薄いシンプルなデザインで、停電時や暗闇などでも見つけやすい蓄光タイプ。「LEDキーチェーンライトと一緒につけておくとよさそう」。110円。
『クロワッサン』1172号より
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