一人ひとりが、自分だけの「みどりのくすり箱」を持つ──森田敦子さん 植物療法を取り入れた介護(3)
撮影・村上未知 構成&文・殿井悠子
「ウェルネスの原点はセルフケアなんです」
植物療法士の森田敦子さんはそう話す。フランスで医療にも活用される植物療法を学ぶなかで、「自分の体のことを、自分で知る」というシンプルな考え方に辿り着いた。
疲れている、眠れていない、むくみや冷えがある──。それらは病気ではないけれど、体が発している小さなサイン。そうした変化に気づくことが、健康の第一歩だと森田さんは言う。熱が出たら体を温める。季節に合わせて食事を変える。身近な人同士で体の変化を気にかけ合う。森田さんは、それらを「特別な技術ではなく、暮らしのなかにあったケア」と考えている。植物療法は、そのための手段の一つだ。ハーブティーを飲む。香りを取り入れる。植物オイルで体をいたわる。大切なのは、こうした行為を通じて自分の体に意識を向けること。
森田さんは、フィトテラピーの力を医療や介護の現場でも生かしたいと訪問看護を始めた。そこで出会った人たちも、ある日突然介護が必要になったわけではない。その前には、眠れない、食欲がない、気力が出ない、そんな小さな変化が積み重なっている。なかには、病気そのものよりも、不安や孤立によって弱っていく人も少なくない。また、介護を受ける人以上に、家族が疲れ切っている場面も多いという。
「ケアされる人よりも、ケアする人のほうが追い詰められていることもあります」
だからこそ、介護が始まる前からケアを考えたいと思うようになった。そうした暮らしのケアに必要な考え方や行動、道具たちを、森田さんは、「みどりのくすり箱」と表現している。好きな香りやお気に入りのハーブティーのような、いわゆる“モノ”のほか、散歩やストレッチなど、その人の心身のバランスを整える行動も指す。一人ひとりの自分を整える方法の総称なのだ。
「誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分たちでできることを増やしていく。それがこれからの時代には必要だと思うんです」
自分の体に目を向け、自分なりの整え方を持つ。そこに、森田さんの考えるセルフケアの出発点がある。その考え方を長年地域で実践してきたのが、森田さんの母・泰子さんだ。次回から2回にわたり、泰子さんのセルフケアの取り組みを紹介する。
『クロワッサン』1170号より
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