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酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.4──初夏の湖北、小龍蝦を追う

中国料理愛好家・酒徒さんの上海暮らしでみつけた美味とおうちで作れる小さなレシピ。

イラストレーション・小野寺光子

酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.4──初夏の湖北、小龍蝦を追う

中国で暮らせる時間には限りがある。だから我が家では、暇を見つけてはどこかへ出かけることにしている。

5月の連休は、十数年ぶりに湖北省の武漢を訪ねた。印象的だったのは漢口の旧租界だ。上海に勝るとも劣らない規模の西洋建築が並び、かつて「東方のシカゴ」と呼ばれた街の繁栄がしのばれた。

武漢に加え、潜江という街にも足を延ばした。きっかけは、行きつけのアイリッシュパブでの会話だ。湖北出身のバーテンダーに武漢行きを話すと、「ぜひ潜江へ」と勧められた。理由を聞けば、そこは「小龍蝦(シャオロンシア・ザリガニ)の街」。国内生産量の4分の1を占める一大産地だという。

ザリガニは初夏から夏にかけて旬を迎える。これはもう天啓である。家族を説得し、予定を組み替えた。旅とは、時に勢いなのだ。

潜江は想像以上にザリガニ一色だった。駅には専門店の広告が並び、駅前にはザリガニのオブジェが立つ。圧巻は「ザリガニ城」の巨大像。全長15メートル、ハサミを広げた姿はもはや町の守護神だ。

1924年竣工の江漢関。摩天楼を背に、漢口旧租界の記憶を今に伝える
1924年竣工の江漢関。摩天楼を背に、漢口旧租界の記憶を今に伝える
潜江名物・ザリガニ城の巨大ザリガニ像。街のスローガンは「潜江ザリガニ、天下を紅く染める」
潜江名物・ザリガニ城の巨大ザリガニ像。街のスローガンは「潜江ザリガニ、天下を紅く染める」
清蒸小龍蝦(ザリガニの姿蒸し)。鮮やかな紅が食欲をそそる
清蒸小龍蝦(ザリガニの姿蒸し)。鮮やかな紅が食欲をそそる
1924年竣工の江漢関。摩天楼を背に、漢口旧租界の記憶を今に伝える
潜江名物・ザリガニ城の巨大ザリガニ像。街のスローガンは「潜江ザリガニ、天下を紅く染める」
清蒸小龍蝦(ザリガニの姿蒸し)。鮮やかな紅が食欲をそそる

日本では馴染みの薄い食材だが、ザリガニはうまい。中国語名の小龍蝦は、直訳すれば「ミニロブスター」。そう名付けた人の気持ちは、食べればよく分かる。

ぷりりとした身の弾力は海老に引けを取らず、頭に詰まったミソは濃厚な旨味の塊。可食部こそ少ないが、それは量で補う。ビニール手袋をはめ、殻を剥き、身をかじり、ミソをすする。その合間に冷えたビールをあおる。没頭の悦楽である。

麻辣(マーラー)や油浸(ヨウジン)といった刺激的な味付けが人気だが、素材の良さを味わうなら清蒸(チンジェン・姿蒸し)がいい。潜江のザリガニには泥臭さが全くなく、遠路訪ねた価値をひと口ごとに感じさせた。初めてザリガニを食べる小学生の息子ですら、夢中で殻を剥いていた。

ザリガニは、両手を忙しく動かしながら食べる料理だ。脇を固めるのは、簡単な冷菜くらいがちょうどいい。今月紹介するのは、そんなザリガニ屋の卓上に似合う一皿だ。

黄瓜拌木耳

酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.4──初夏の湖北、小龍蝦を追う

huángguā bàn mù’ěr(きゅうりときくらげの冷菜)
手早く作れてさっぱり旨い夏の名脇役

【材料】
きゅうり…100g
木耳(乾燥)…10g
にんにく…1かけ
香菜…少々
A[醤油…小さじ1、黒酢…小さじ1、塩…ひとつまみ、胡麻油…小さじ2

【作り方】
木耳は砂糖小さじ1(分量外)を溶かしたぬるま湯に20分以上つけて戻す。石づきを取り、2分ゆでてざるに上げ、水気を切る。にんにくはみじん切り、香菜は粗く刻む。きゅうりは縞目に皮を剥き、包丁の腹で軽くたたき、4cmの長さに切る。ボウルにきゅうり、木耳、にんにく、香菜を入れ、Aを加えてさっと和える。

酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.4──初夏の湖北、小龍蝦を追う
  • 酒徒 さん (しゅと)

    中華料理愛好家

    北京・広州・上海に暮らす。著書に本場中華料理のレシピ本『あたらしい家中華』『中華満腹大航海』がある。

『クロワッサン』1169号より

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