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【新連載】酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.1 ──白玉蘭の季節、春を告げる一碗の麺

中国料理愛好家・酒徒さんの上海暮らしでみつけた美味とおうちで作れる小さなレシピ。

イラストレーション・小野寺光子

【新連載】酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.1 ──白玉蘭の季節、春を告げる一碗の麺

学生時代、本場の中華料理に魅せられて早30年。中華料理三昧の暮らしを夢見て、中国に関わる仕事に就いた。気づけば中国生活12年目、上海では7度目の春節を迎えた。

春節明けの上海ではぐずついた天気が続いていたが、寒さは少しずつ緩み、春の気配が混じり始めた。週末に街へ出ると、通りのあちこちで上海の市花・白玉蘭(バイ・ユー・ラン)が大きな花を咲かせていた。

そんな春の上海で、私が毎年楽しみにしているものがある。福州路の老舗「老半齋(ラオ・バン・ジャイ)」(1905年創業)の名物、刀魚汁麺(ダオ・ユィ・ジィ・ミエン)だ。

枝いっぱいに白い花をつける白玉蘭(ハクモクレン)。冬の終わり、上海の街路や公園で一斉に咲き始める
枝いっぱいに白い花をつける白玉蘭(ハクモクレン)。冬の終わり、上海の街路や公園で一斉に咲き始める
刀魚汁麺。乳白色のスープに麺だけが沈む、春先だけの一杯
刀魚汁麺。乳白色のスープに麺だけが沈む、春先だけの一杯
大看板を掲げる老舗「老半齋」。この時期は朝から地元客でにぎわう
大看板を掲げる老舗「老半齋」。この時期は朝から地元客でにぎわう
枝いっぱいに白い花をつける白玉蘭(ハクモクレン)。冬の終わり、上海の街路や公園で一斉に咲き始める
刀魚汁麺。乳白色のスープに麺だけが沈む、春先だけの一杯
大看板を掲げる老舗「老半齋」。この時期は朝から地元客でにぎわう

刀魚とはエツのこと。体長30センチほどのカタクチイワシの仲間で、産卵のため春先に長江を遡上する。

この魚で作る汁麺が、上海の春の風物詩。毎年2月頃に登場し、清明節(4月5日頃)までが食べごろだ。販売初日には季節の一杯を求めて上海人の長い行列ができ、地元テレビのニュースになるほど。私も毎年必ず足を運ぶ。

この麺の真価は、なんといってもスープにある。エツの身と骨を炒めながら細かく砕き、「魚松(ユィ・ソン)」というペーストにする。それを布で包み、丸鶏、火腿(中華ハム)、豚骨、豚足などとともに何時間も煮込む。そうして出来上がるのが、とろりと白濁したスープだ。

碗の中に具は一切なく、麺だけが沈む。潔いたたずまいに、思わず頬がゆるむ。熱々のスープをすすると、濃密なコクがありながらくどさはなく、胡椒が旨味を引き締める。歯ごたえのよいストレート麺は、あくまでスープの引き立て役に徹する。「天下第一光麺(天下一の具なし麺)」と呼ぶ声があるのも納得だ。今年もまた、夢中になってあっという間に平らげてしまった。

この店には、刀魚餛飩(ダオ・ユィ・フン・トゥン)という名物もある。刀魚と豚肉を合わせた餡を包んだ上海式の大きなワンタンだ。ただ、こちらは旨味が強すぎる印象で、私は汁麺の完成度に軍配を上げたい。

もちろん、この麺を家庭で再現するのは難しい。そこで今回は、麺屋で箸休めに食べる簡単な冷菜をご紹介しよう。

腐竹拌西芹

【新連載】酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.1 ──白玉蘭の季節、春を告げる一碗の麺

fǔzhú bàn xīqín(中国湯葉とセロリの冷菜)
むっちりした湯葉をセロリと干し海老が彩る爽やかな冷菜。

【材料】
腐竹(乾燥中国湯葉)40g、セロリ1本(100〜120g)、干し海老少々、紹興酒大さじ1〜2
[A]塩ひとつまみ、米酢小さじ2、砂糖少々、胡麻油大さじ1

【作り方】
腐竹はぬるま湯に3時間ほど浸して戻し、食べやすく斜め切りにする。干し海老は紹興酒に30分ほど浸して戻し、そのまま軽く煮立てて冷ましておく。セロリは筋を取り、細い斜め切りに。湯を沸かして腐竹を2分茹で、セロリを加えてさっと10秒。ざるに上げ、水気を切ってボウルに入れる。干し海老を戻し汁ごと加え、Aで和える。

【新連載】酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.1 ──白玉蘭の季節、春を告げる一碗の麺
  • 酒徒 さん (しゅと)

    中華料理愛好家

    北京・広州・上海に暮らす。著書に本場中華料理のレシピ本『あたらしい家中華』『中華満腹大航海』がある。

『クロワッサン』1163号より

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