『神さまと顧問契約を結ぶ方法』yuji 著──人生に漠然とした不安を感じた時の羅針盤
文・中川真人
人は長く生きていると、さまざまな出来事に触れ、傷ついたり悩んだりすることがあります。また、喜びや豊かさに目を向ける時もあります。経験が豊富であるにも関わらず、自分なりの処世術だけで人生という旅をうまく歩むことが困難なタイミングがあるものです。時には、慣れない価値観や普段手に取らない書籍のタイトルが突然、目に飛び込むこともあるものです。
私は将来についての漠然とした不安から、これまでは選ばなかったような所謂スピリチュアル系の書物も読むようになりました。さらには『人生の諸問題 五十路越え』という実に率直なタイトルの本を読んだりもして、それはフィクションの世界に浸りがちな私にとっては珍しい選択でした。
本書もそんな新たな選択のひとつで、初版は2017年ですがコロナ禍を越えて改稿され、文庫版として再登場した一冊。
やる事なす事、上手く行かない状況は誰にでも訪れます。人間関係、仕事、恋愛、健康などにおいて、ことごとく障壁が立ちはだかって、突破への出口が見えず、悪あがきを重ねて、更にドツボにはまるといった経験をすることも珍しくありません。
著者のyuji氏は、このような状況を神からのメッセージと捉え、正しい人生の道を見つけるための方向転換のチャンスだと説きます。本書の中で神は、人生の課題を乗り越える指導的存在として描かれています。間違った道にいるからこそ、強制的に立ち止まらせて、進むべき道を見つけるヒントを教えてくれているといいます。本来の道から逸れている人々は、著者の分析によれば、何と! ほぼ100%の99.2%に達し、まさに迷える子羊だらけなのです。
フォトグラファーという天職に恵まれていた(と信じていた)私は、自分がまさかその圧倒的多数派に属しているとは、思いもよりませんでした。
本書は〈顧問契約〉という独特な表現で、自身の“カルマ”に向き合い、神の支援を得て歩む術を具現化する方法を示しています。日々の善行は〈追い風〉を生んでくれます。反対にネガティヴな言葉使いや乱暴な行いは神様に嫌われてしまいます。これは人の生き方として最低限の道徳観と言えるでしょう。他人からとうとうと諭されることではないと感じるでしょう。でも、この最低限を生活の中できちんと守り続けている方は、どれくらいいるでしょうか? 清廉潔白だと胸を張って言える方は、いるのでしょうか?
〈頼まれごとは試されごと〉であり、好きなことに固執せず、与えられた課題に真摯に取り組む姿勢が大切です。〈顧問契約を結ぶ〉という考え方は、祈るだけではなく行動や思考を通じて神との関係を深め、人生を豊かにするための訓練なのだと思いました。
神は常に見守っている。神様を味方につけて本来あるべき自分自身のいきいきとした人生を謳歌したいと思った時は、一度立ち止まり、振り返ってみる。未来を見据える際は、そんな考えが人生の旅のガイドとなるかもしれません。
『クロワッサン』1143号より
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