料理家の中川たまさんが選ぶ、9つのナチュラル調味料。
撮影・中島慶子(調味料) 文・小林百合子
中川たまさん|シンプル・イズ・ベストなナチュラル調味料。
調味料選びの基準はできる限り余計なものが入っていなくて、昔ながらのシンプルな製法で作られていること。子どもの頃から化学調味料に敏感な体質だったこともあり、香料などの添加物が入っていないものを自然と選ぶようになりました。
料理やお菓子に使ううち、ナチュラルな原料、製法で作られているものは風味や香りの伝わり方が格段に違うと気づいたことも大きいです。シンプルであるほど飽きがこず、いろいろな料理に使えます。
福来純 伝統製法 熟成本みりん(白扇酒造)
岐阜県の酒造が国産のもち米、米麹、米焼酎の3つの原料のみで造る本みりん。江戸時代から続く伝統的な製法で仕込み、熟成に3年かけることで深みのある甘みと複雑な旨みを醸す。「飲んでもおいしいと聞き、試して納得! しっかりとした甘みがあってもしつこさがなく、上品。化学調味料や添加物が入っていないのも大きなポイント」。
吉野杉樽 天然醸造醤油(フンドーキン醬油)
国産の大豆と小麦、天日塩を吉野杉の木樽で約1年間発酵・熟成させて造られる醤油。醸造を促進させる酵素や食品添加物を一切使わない、天然醸造。「濃口といっても濃すぎず、まろやかで口当たりがいいのが魅力。そのまま使っても火を通しても風味がよく、ほかの調味料と合わせてもケンカしない。あらゆる意味で〝塩梅のいい〞醤油です」。
ゲランドの塩(顆粒)(Le Guérandais )
フランス・ブルターニュ地方で作られる100%天然海塩。塩田に海水を引き込み、太陽と風の力だけでゆっくりと結晶化させた塩は、ミネラルたっぷり。「塩味が立ちすぎないまろやかな風味で、甘さを感じるほど。和食、洋食、お菓子など、ほとんどの料理に毎日使っています。細かい粒子でさっと溶ける顆粒タイプが使いやすい」。
生詰 あわせみそ(フンドーキン醬油)
原料は米、大豆、食塩、大麦だけの無添加の合わせ味噌。「米味噌は自家製ですが、市販品ならこれ。両親が大分出身で、幼い頃から味噌といえば麦。この味噌は麦の香りと米の甘さのバランスに優れ、味噌汁にするとその風味がよく感じられます。少し甘めなので、和え物や炒め物に使うとコクも出る。肉や魚の味噌漬けにも」。
ゆうき市場の洗双糖(風水プロジェクト)
種子島産のサトウキビから作られた粗糖。上白糖やグラニュー糖より精製度合いが低く、甘い蜜のような香り。「甘さだけが前面に出るのではなく、しっかりとしたコクの中に優しい甘さを感じられるのが魅力。茶色い砂糖でも仕上がりの色がきれい」。
有機赤ワインビネガー(グエルゾーニ)
自家栽培の有機ぶどうを100%使ったイタリア産の赤ワインビネガー。酸化防止剤不使用。「赤ワインビネガーのやや強めの酸味が好きでよく使いますが、ツンとくる刺激がない優しい酸味がいい。ドレッシングやマリネなどに使うと豊かなぶどうの香りが際立ちます。炭酸水で割ってドリンクにも」。
米油(ボーソー油脂)
玄米を精米する際に出る米糠を使用した国産米油。風味にクセがなく、料理やスイーツなど万能に使える。「仕上がりが軽く、餃子などがカリッと焼けるのがいい。油特有のにおいが少ないので、お菓子やドレッシングに使っても味を邪魔しません。スーパーで手軽に買えること、ボトルサイズが豊富なのも魅力です」。
アロマティコ(マリチャ)
熟した新鮮な実だけを使い、収穫後24時間以内に製造されるマレーシア産のブラックペッパー。爽やかなスパイシーさと果実を思わせるほのかな甘さ、華やかなアロマが魅力。「とにかく香り高く、仕上げに使うと味をきゅっと引き締めてくれます。フルーツにかけるのも好きで、ひと振りで味が際立ちます」。
福来純 純米料理酒(白扇酒造)
岐阜県産の米を主原料に、職人が手作業で育てた米麹を使い、蔵元伝承の製法「もち米四段仕込み」で仕込んだ料理酒は、深みのあるコクと甘みをもたらす。「飲用の清酒に比べ、旨みが強いのが魅力。料理酒専用の米麹を作るところから手がけているのは、さすが老舗の酒造です。肉や魚の臭みをしっかり取りつつ、素材の味を引き立ててくれます」。
『クロワッサン』1117号より ※価格は取材時のものです。