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本田明子さんに教わる、魚の酢じめの極意と3つのレシピ。

昔から家庭料理でお馴染みの酢締めの極意をマスターすれば、いつもの魚料理が激変。

撮影・三東サイ 構成&文・板倉みきこ

初心者が難しく考えがちな酢締めは、実は一度段取りさえ知れば、料理巧者でなくとも取り入れやすい仕込みだ。

「晩酌のアテにもいいし、野菜を加えればおかずにもなる。酸味が利いた、夏場に最適な食べ方だと思います」

とはいえ、足の早い青魚を使用することが多いので鮮度には充分注意を払う。

「酢締めをすると身がしまるので、その後、火を入れるとさらに硬くなってしまい、加熱調理はおすすめできません。だから、生で食べるのと同じ。一度冷凍された刺身用の新鮮な魚を使い、素手で触る時間をなるべく減らしましょう」

雪のようにしっかり塩を振り、本漬け前に酢洗いする、本田さん流酢締めの極意と使える展開レシピを学ぼう。

究極の酢締め魚

本漬けする前の塩振りと酢洗いが鍵。

本田明子さんに教わる、魚の酢じめの極意と3つのレシピ。

酢締めの極意

【材料(2人分)】
鯵(三枚おろしにしたもの)2尾分
粗塩 適量(魚100gに対し小さじ1~1と1/2)
穀物酢 1/2カップ
氷水 2.5カップ
漬け酢[米酢 1/2カップ、砂糖 小さじ1~4(好みで)
※イワシの場合は魚が小さいので、漬け酢の配合が異なる(下記事参照)]
昆布 適量
付け合わせ[青じそ 2枚、生姜 少々、茄子小さめ 1個]

本田明子さんに教わる、魚の酢じめの極意と3つのレシピ。

1.バットに清潔な乾いた布巾か、ペーパータオルを敷く。魚の両面に塩を多めに振る。前ページで紹介した焼き魚の仕込み時に振った塩の倍量をイメージ。なじませずそのままでOK。冷蔵庫に入れる。鯵や鯛なら45~60分、鯖は90~120分、イワシなら30分前後。

本田明子さんに教わる、魚の酢じめの極意と3つのレシピ。

2.ボウルに酢(酢洗い用のお手頃価格の穀物酢)と氷水を入れ、塩を洗い落とす。身が皮と重ならないようにバットに並べ、ペーパーなどで魚の両面の水気をしっかり拭き取る。この際、手で直接魚に触れる時間を極力減らす。

本田明子さんに教わる、魚の酢じめの極意と3つのレシピ。

3.[漬け酢]の酢と砂糖を混ぜ、2に注ぎ入れる。ここで使う酢は味の決め手となるので、コクや旨味がある米酢を使う。また洋風にアレンジするならりんご酢、中国風なら黒酢を使うのもおすすめ。

本田明子さんに教わる、魚の酢じめの極意と3つのレシピ。

4.3の状態で冷蔵庫に入れてもいいし、風味が増すので昆布で表面を覆って蓋をしてもいい。使った昆布は佃煮にすると美味。酢締めの時間は好みもあるが、まずは食べきれる量で20〜30分をめどに。

本田明子さんに教わる、魚の酢じめの極意と3つのレシピ。

5.漬け酢から魚を取り出して水気をきり、身の端から皮をはぐ。その際、魚を手で直接押さえるのではなく、ペーパーを間に挟んで。次に小骨を確認し、あれば抜くかその部分を薄く切り落とす。食べやすくひと口大にそぎ切りし、食べるまで冷蔵庫に入れておく。

6.茄子は薄い輪切りにして、海水くらいの塩水(約3.4%)に10~15分浸けて、水気をギュッと絞る。

7.生姜は皮をむき、針生姜にする。

8.器に青じそを敷き、締めた鯵をバランスよく盛り、針生姜と6の塩茄子を添える。

鯛の夏ちらし寿司

本田明子さんに教わる、魚の酢じめの極意と3つのレシピ。

酢締めで使った漬け酢でれんこんを煮るので、魚と昆布の風味がほんのりプラスされる。卵の旨味が際立つ、調味料なしで作る錦糸卵と好相性。

【材料(2人分)】
酢締め鯛小さめ 1尾分(150gくらい・三枚おろし)
漬け酢 大さじ3
米 1合
寿司酢[米酢 50ml、砂糖 小さじ2~3、塩 小さじ1/3]
千切り生姜 少々
れんこん 50g
きゅうり 1/2本
卵 1個

【作り方】
1.れんこんを薄切りにして鍋に入れ、酢締めの漬け酢と砂糖少々(分量外)、水大さじ3でさっと煮る。きゅうりは輪切りにし、海水くらいの塩水(約3.4%)に10〜15分浸けて水気を絞っておく。卵は調味料を入れずに錦糸卵にする。
2.寿司酢に千切り生姜を加え混ぜる。
3.炊き立てご飯を木製の飯台やボウルに入れ、寿司酢を加え混ぜ、冷ます。水気を切ったれんこんときゅうりを混ぜる(飾り用に少し取り置く)。
4.漬け酢から鯛を取り出し皮をはぎ、小骨を取るか、小骨の場所を確認したら包丁で薄く切り落とし、食べやすくそぎ切りする。
5.3の寿司飯を器に盛り、きゅうり、酢れんこん、酢締め鯛をのせ、錦糸卵を散らす。

黒酢南蛮イワシ

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イワシはサイズが小さいので、漬け酢の配合は下記を参考にし、和風の場合は米酢を使って。野菜は好みでアレンジ自在。ねぎだけでも充分美味しい。

【材料】
酢締めイワシ 4尾分(三枚おろし)
漬け酢[黒酢 50ml、砂糖 小さじ1〜3]
セロリ 10cm
にんじん 5cm
長ねぎ 5cm
生姜 少々
ごま油 小さじ2
すりごま 小さじ2

【作り方】
1.漬け酢からイワシを取り出し、皮をはぐ。斜めに細切りにして、器に盛る。
2.セロリ、にんじん、長ねぎ、生姜は千切りにして、ごま油で和える。5~10分して少ししんなりしたらイワシにのせ、すりごまを振る。

鯵とポテトのカナッペ

本田明子さんに教わる、魚の酢じめの極意と3つのレシピ。

本漬けは米酢のほか、りんご酢を使えばより洋風な味わいに。薄く切ったバゲットにのせればパーティーフードになる。

【材料】
酢締め鯵1~2尾分(三枚おろし)
じゃがいも 大1個(150g)
玉ねぎ 小1/4個
おろしにんにく 少々
オリーブ油(好きな植物油でOK)小さじ2
ディルまたは青ねぎ 適量
バゲット 適量

【作り方】
1.じゃがいもは皮をむいてひと口大に切り、ひたひたの水で蓋をして10~12分、中火でゆでる。火が通ったら、フォークなどで粗めにつぶす。
2.玉ねぎはみじん切りにして、おろしにんにく、油を加える。じゃがいもを加え混ぜ、完全に冷ます。
3.漬け酢から鯵を取り出し皮をはぎ、小骨は抜くかスーッと薄く切り落とし、水気を拭いたら5mm角ほどに小さく刻む。
4.2に鯵を加え、ディルの葉をちぎって混ぜる。ディルの量は好みで、青ねぎの場合は小口切りにして加える。薄切りのバゲットにのせる。

  • 本田明子

    本田明子 さん (ほんだ・あきこ)

    料理研究家

    家庭料理で独自のスタイルを確立した小林カツ代さんの一番弟子。近著は『本田明子さんのさあ、なに食べよう。』(マガジンハウス)。

『クロワッサン』1119号より

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