喜多流 シテ方 能楽師の大島輝久さんが手みやげに推薦!『宗家 源吉兆庵』の「あんぱん」
撮影・青木和義 文・辻さゆり
和菓子店ならではのなめらかな餡と、絶妙な甘さ。
喜多流の能楽師で、大島家5代目の大島輝久さんお気に入りの手みやげは、和菓子店『宗家 源吉兆庵』のあんぱんだ。
「吉兆庵さんの和菓子は昔から知っていたのですが、観世流の友人の社中会に行った時に初めて楽屋で吉兆庵さんのあんぱんが置いてあるのを見て、小ぶりで食べやすそうだな、と。実はその友人の奥様が吉兆庵の娘さんだったんですね。それで自分が主宰する会を銀座で開く時に、お弁当と一緒に楽屋に置いてみました」
能の世界では主宰者、つまり舞台の主役を務める人間が、楽屋のお弁当からお菓子まで全部手配しなければならない。
「50人くらいいる出演者より少し多めに用意するのですが、この日、お弁当は余ったのに、あんぱんは大人気であっという間になくなってしまった。能の楽屋はけっこうバタバタしていて、パッと食べてすぐに仕事にうつる。時間をかけずに手軽に食べられて糖分を補えるあんぱんは、楽屋と相性がいいのだと思います」
『宗家 源吉兆庵』は旬の果物の味わいを丸ごと生かした和菓子が有名で、あんぱんを作り始めたのは最近のこと。餡は自社工場で作ったあんぱん専用のもので、少量のバターを溶かし入れることでパン生地になじむあんこに仕立てている。
「和菓子屋さんだけあって、餡がとてもなめらかでおいしい。僕は昔からこしあん派ですが、師匠はつぶあん派。だから、あんぱんは両方を用意しています」
仕事柄、手みやげをもらうことは多いが、お弟子さんの発表の場となる社中会以外、公演中はそれを開ける時間もない。
「舞台が終わった翌日、後片づけが一段落した頃に母が『お抹茶を点てましょうか』と言い、『無事に終わったね』と話しながら手みやげのお菓子をいただいています。我々にとって手みやげは、おいしさだけでなく、ほっと寛ぐ家族の時間も一緒にいただいているようなものですね」
●宗家 源吉兆庵(そうけ みなもときっちょうあん)
[銀座本店]東京都中央区銀座6・9・8
TEL.03・5537・5457
営業時間:10時〜20時(土日祝は〜19時)、無休。
直営全店舗で、予約のみ購入できる。
『クロワッサン』1101号より