よく使うものと使わないものを分ける、「バックヤードの収納法」とは?
が、その現実を引っくり返すのは実はモノの〝稼働率〟を検証するという作業だった!
撮影・丹野雄二(部屋写真)、谷 尚樹(人物写真) イラストレーション・オガワナホ 構成&文・堀越和幸
モノの稼働率で見きわめる、〝バックヤード収納〟という考え方。
上の写真は捨てない整理収納アドバイザー、米田まりなさんのダイニングルームである。恐ろしいほどモノが少ない。まるでモデルルームのよう。
「私自身、けっこう“モノ持ち”のほうだと思うのですが、あるルールにのっとって1LDKの家を片づけています」
あるルールというのは収納をゴールデンゾーンとバックヤードに分ける考え方だ。米田さんによれば、日本の住宅の収納スペースの割合は年々減少傾向にあるらしい。
「“収納率”と呼びますが、一般的なマンションで5〜7%くらい、一戸建てでは13%くらいといわれています。近年はデザイナーズマンションの台頭でますます少なくなっています」
収納スペースは減ってもモノは減らない。つまり片づけの難易度は年々上がっていく一方というわけだ。
「ゴールデンゾーンとは家の中の特等席のことで、手を伸ばしてワンアクションでモノが取れる場所を指します」
一方のバックヤードは、
「通常は倉庫収納のようなイメージですが、ここではゴールデンゾーン以外の全ての収納をバックヤードと呼びます。その2つのゾーンに徹底的にモノを振り分けて片づけるのが、今回ご紹介する“バックヤードの収納法”です」
上記写真に話を戻せば、テーブルやテーブル奥のすぐに手が伸ばせるスペースがゴールデンゾーン。それではバックヤードはどこで、そこにどんなものが片づけられているのか?
「家の狭さが原因なのに、片づかないのをつい自分の性格のせいにしてしまう人が多い。そんな人にぜひ実践してもらいたいです」
その実例をさっそく見ていこう。
【モノの仕分け】私がこれを使ったのはいつ? 過去に尋ねてモノを分類。
モノをゴールデンゾーンとバックヤードに振り分けるには、まず分類をしなければならない。その際のキーワードになるのがモノの“稼働率”だ。
「平たく言えば使用頻度の高いものは、手の届くところに、そうでないものは奥に片づける、という考え方です」
あなたの部屋にあるモノを一度、稼働率というメガネをかけて見渡してみよう。それを手にしたのはさていつのことだったか?
「まずこの1年で使ったか。次にこの1カ月以内に使ったか。そのふるいにかけられて残ったものが、ゴールデンゾーンに収められるべきものです」
注意すべき点は、未来ではなく過去に訊くということ。
「未来の見通しには主観が入りがちです。そのうち使うかもしれない、という考え方はこの際切り捨てていきます」
そうして残った稼働率の低い、すなわち使わなかったものはどうするか?
「使わないものはそれに対する愛着の度合いでさらに仕分けします」(下表)
お出かけ用のバッグ、写真集、親から譲り受けた着物、微妙に残った香水……。私はなぜこれを所有している?
「バックヤードにもゆるい序列を設けて、稼働率や愛着の度合いによって配置していけば一層効率的になります」
【ゴールデン ゾーンとバックヤード】実例からひもとく、それぞれのスペースの考え方。
ここでは米田邸を例にゴールデンゾーンとバックヤードの実際を見ていこう。まずは冒頭の写真のダイニングテーブル奥に隠れていた棚のスペース。
「たんすやクローゼットに限らず、収納が可能なあらゆる生活領域にゴールデンゾーンとバックヤードは存在します。これは部屋の一角の例(下写真 A・B)」
立ってそのまま手を伸ばせば手が届く棚の部分がゴールデンゾーン。屈まないとモノが取り出せない棚下はバックヤードだ。
「棚下の布帛のケースにはパンやレトルト食品の備蓄やお酒類など、比較的使用頻度の低いものが入っています」
もう一つの例はクローゼット。ゴールデンゾーンは中央の衣類をかけるポール部分、その上の枕棚部分と下の衣装ケースがバックヤードに当たる。
「枕棚のケースはたまに使うバッグやハンガー入れです。一番右には来客用の布団を圧縮してしまってあります。下の衣装ケースは、季節外の衣類のほかに、本やスキャナーなどのガジェット類。どれも月に1回使うか使わないか」
ここで米田さんから収納の仕方についての秘訣も伝授。ゴールデンゾーンの収納は取りやすさが命だから8割収納を心がけるが、バックヤード収納はギュウ詰めにしてもよいのだそうだ。
(A)ゴールデンゾーン
(B)バックヤード
(C)バックヤード
(D)ゴールデンゾーン(8割収納)
(E)バックヤード(ギュウ詰め)
(F)ハンガーは3cmほど開けて8割収納に。